日本大学生物資源科学部

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FACULTY
2014.11.20

FACE OF FACULTY

本学部の教員には、それぞれの専門分野に対する深い造詣やユニークな研究テーマを持ち、かつその分野にとらわれない幅広い活動を展開しています。ここではそうした教員の研究や活動などのエピソードについて紹介。彼らの素顔も垣間見られるかもしれません。そして私たちの身近なところにも教員たちの成果が息づいているかも。

ミクロの視点から樹木の謎と応用に迫る YOSHIHIRO KATAYAMA

profile

日本大学生物資源科学部森林資源科学科教授。1973年東京農工大学農学部林産学科卒業。1975年同大学大学院農学研究科林産学専攻修士課程修了。1978年東京大学大学院農学系研究科林産学専修博士後期課程修了。博士(農学)。(株)日本紙パルプ研究所研究員、(株)神戸製鋼所技術開発本部生物研究所主幹研究員、東京農工大学共同研究開発センター助教授、同大学大学院生物システム応用科学研究科教授を経て2010年より現職。専門は林産科学、木質工学。

森林資源科学科 教授
片山 義博

 樹木を構成する主成分の一つにリグニンという物質があります。本学部森林資源科学科の片山義博教授は、このリグニンを分解する微生物を発見し、分解メカニズムを明らかにしました。
 樹木は、その約95%が「セルロース」「ヘミセルロース」「リグニン」という三つの主要化学成分で構成されています。巨大な樹木は細胞壁で支えられ、その細胞壁は鉄筋コンクリートに例えられます。細胞壁に存在するセルロースとヘミセルロースは鉄筋の役割を果たし木材に柔軟性や弾性を与え、リグニンは細胞壁全体の20〜30%を占め、コンクリートの役割を果たして巨大な樹木を支えています。

「樹木は年月を経ると枯れて土に還ります。そのとき、樹木を構成する三つの成分はいずれも土の中の微生物によって分解され、水と二酸化炭素になります。セルロースやヘミセルロースは、糖が連なった比較的単純な構造ですから、容易に分解されます。ところが、リグニンは複雑な化学構造を持っているため、どのような土壌微生物によって、いかにして分解されるのかが明らかにされていなかったのです」

 片山教授は学部生の頃に、そのリグニンの謎を解明してみたいと思うようになります。そして東京大学大学院博士課程在籍時に、ある製紙工場付近の川の土壌からリグニン由来化合物分解菌Sphingobium sp. SYK-6株を発見しました。

「その発見の少し前から、遺伝子工学の時代が到来していました。遺伝子工学の手法を使えば、生物現象をDNAから読み解くことが可能になります。そこで、発見した微生物のリグニン分解機構をDNAレベルで調べることにしました。遺伝子配列を読み解くことで、微生物が生産する多様なリグニン分解酵素を特定することができます。そうすれば、多くの反応が組み合わさった複雑な分解経路を明らかにすることができるというわけです」

 片山教授はその後、東京農工大学で20年にわたり、学生とともにリグニン分解プロセスの研究を進め、ついにその全容の解明に成功したのです。

リグニン利用の可能性を広げる

 リグニンは、あまたある樹木の中に大量に存在するにもかかわらず、これまではそのまま燃やして燃料にするくらいしか利用価値がありませんでした。もともと片山教授によるリグニン研究の根底には、リグニンをどのように有効に利用するかという問題意識もありました。すなわち、微生物の力を借りてリグニンを分解することで、利用価値のある新しい物質ができないかと考えたのです。
 そうした問題意識から見出されたのが「PDC」という物質です。これは、微生物によるリグニンの分解プロセスの中で一時的に生成されるものです。PDCは、プラスチックのような樹脂などの工業原料として利用することができます。

「工業原料にする場合には、いかにして結晶の様な純粋な化合物として取り出すかが重要になります。PDCは、人工的に合成することが難しい化合物です。しかし微生物は、純粋なPDCを作り出すことが出来ます。なのでリグニンから純粋なPDCを微生物に作ってもらったということです」

 PDCには金属と接着するという不思議な性質があり、強力な接着剤としても応用できます。また、少し構造を変えるとフィルム材料にもなります。今後、さらに新たな機能が発見される可能性があり、発展性の大きいバイオマス資源として注目されています。

研究用モデル樹木を開発

 片山教授は一方で、森林研究に役立つ「モデル樹木」の開発も行っています。そのきっかけには、生きものを対象とする研究に対する自身の考え方の変化があったそうです。

「遺伝子組み換えの研究をしていると、壁に打ち当たることが多かった。なかなか人間の思い通りに生物は動いてくれないのです。私たち人間にできるのは、まず『生物を克明に観察し、生物から学ぶこと』なのだと悟りました。そこで本学部に移ってから、樹木の成長の様子を細胞レベルで観察できるような、モデル樹木をつくろうと考えました。具体的には、遺伝子にマーカーをつけて分裂細胞を染色できるようにし、樹木の幹にある形成層でどのように細胞が分裂しているのかを観察・追跡できるようにしました。このモデル樹木を使えば、樹木の巨大化メカニズムを細胞やDNAレベルから解明していくことができます。国内外の研究者に提供して、研究の進展に役立ててほしいと考えています」

 片山教授の研究には、森林という大きな世界に、DNAや細胞のようなミクロな世界を結びつけるダイナミックな魅力があります。

「森林は対象が大きく複雑で、一人ではなかなかとらえどころが見いだせない。このマクロな世界に分子生物学のミクロなアプローチを取り入れると、印象がガラっと変わります。想像もしなかったような未知なる世界が広がっているのです。森林を巨大な対象として見るだけでは、なかなかそうした面白さは見えないかもしれません。ですが、マクロからミクロへと視点を変えることで、思いもよらない発見があるということを、学生の皆さんに知ってほしいですね」
  • リグニン由来化合物分解菌Sphingobium sp. SYK-6株。リグニンは、まず真菌類(カビ、キノコ)などによって断片化された後、この微生物によって水と二酸化炭素にまで分解される。

    リグニン由来化合物分解菌Sphingobium sp. SYK-6株。
    リグニンは、まず真菌類(カビ、キノコ)などによって断片化された後、この微生物によって水と二酸化炭素にまで分解される。

  • 細胞から個体に分化再生した遺伝子組換えポプラ。モデル樹木は、さまざまな環境的要因が、どのような影響を受けるのかを細胞レベルで継続的に評価することを可能とします。これらの研究が安定な木材資源生産技術の開発に貢献することができる。

    細胞から個体に分化再生した遺伝子組換えポプラ。
    モデル樹木は、さまざまな環境的要因が、どのような影響を受けるのかを細胞レベルで継続的に評価することを可能とします。これらの研究が安定な木材資源生産技術の開発に貢献することができる。

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