日本大学生物資源科学部

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FACULTY
2014.10.24

FACE OF FACULTY

本学部の教員には、それぞれの専門分野に対する深い造詣やユニークな研究テーマを持ち、かつその分野にとらわれない幅広い活動を展開しています。ここではそうした教員の研究や活動などのエピソードについて紹介。彼らの素顔も垣間見られるかもしれません。そして私たちの身近なところにも教員たちの成果が息づいているかも。

脂肪細胞の新たな可能性を広げる KOICHIRO KANO

profile

日本大学生物資源科学部応用生物科学科教授。1989年日本大学農獣医学部畜産学科(現・生物資源科学部動物資源科学科)卒業。1994年神戸大学大学院自然科学研究科資源生物科学専攻博士後期課程修了。博士(農学)。神戸大学農学部応用動物学科助手を経て、2000年日本大学生物資源科学部講師に。同学部准教授を経て2013年より現職。専門は細胞・発生生物学。

応用生物科学科 教授
加野 浩一郎

 人や動物の体から脂肪細胞を取り出し、特殊な方法で培養すると、さまざまな細胞になる能力をもつようになります。このように変化した脂肪細胞を「脱分化脂肪(DFAT)細胞」といいます。このDFAT細胞を世界で初めて作製したのが、本学部応用生物科学科の加野浩一郎教授です。
 加野教授は、神戸大学大学院で生殖細胞の分化(特殊な形と働きをもつ細胞へ変化すること)の研究により博士号を取得。その後、所属していた研究室の隣にあった栄養学の研究室に助手として呼ばれます。

「その研究室では当時、家畜の体につく余分な脂肪を減らすための研究が行われていました。私は、脂肪を減らすためには、まず脂肪細胞がどのように作られるのかを知る必要があると考えました。そこで脂肪細胞の分化メカニズムに着目した研究を始めたのです」

 加野教授は2000年に本学部に籍を移した後も脂肪細胞の分化の研究を続け、やがて脱分化脂肪細胞の作製に成功することになります。

再生医療へ応用の可能性も

 当時の一般的な考え方では、哺乳類の場合、一度分化した細胞が再び未分化な状態に戻ることはありえないとされていました。ところが2008年、加野教授の研究チームが発表した論文によって、その常識が覆されます。哺乳類の脂肪組織から取り出した脂肪細胞を「天井培養」という方法で培養することで、脂肪細胞が脱分化状態(未分化な状態)に変化することを明らかにしたのです。天井培養とは、成熟脂肪細胞の浮遊性を利用して、フラスコの天井部に付着させて増殖させる方法です。
 このDFAT細胞の作製方法は、iPS細胞のように遺伝子を導入する必要がなく、簡易で安全性が高いとされています。また胚を用いるES細胞と違い、倫理的な問題もクリアできます。
 加野教授が作製に成功したDFAT細胞には、さまざまな分野に応用の可能性があるそうです。

「まずは再生医療や創薬への応用が第一ですが、たとえば美容や若返りにも応用できます。若いときに自分の体から脂肪細胞を採取してDFAT細胞にしてから保存。そして歳を取った後に、それを使って皮下組織をつくり移植すれば、若返ることも可能です」

 また、加野教授の研究チームは、細胞が脂肪細胞へ分化するメカニズムについての研究も深化させています。2014年2月には、細胞の“かたち”の変化が分化の引き金となっていることを明らかにした論文が、ネイチャー・パブリシング・グループの発行するオンライン限定の学術誌「Nature Communications」に掲載されました。この発見は、「細胞分化は転写因子の発現により制御される」という、これまでの細胞生物学の通説をひっくり返すものでした。

「細胞の形を変化させるだけで脂肪細胞へ分化できるということは、すなわち、形を変えることで、がん細胞を脂肪細胞にできる可能性もあるということです。無秩序に増殖するがんを脂肪にしてしまえば、増殖が止まるだけでなく、運動することでかんたんに減らすことができます。この発見は、がん治療に新たな道を開くことになるかもしれません」
学生と一緒に考える

 加野教授は、研究室の学生を独立した研究者として扱うことにしているそうです。指導の際には、学生が自分で考え、自ら行動することを重視しています。

「研究は、“うまくいかないこと”の繰り返しです。私たち教員がすべきなのは、学生がうまくいかなかったときにそれを解決してあげることではなく、うまくいく方法を学生と一緒になって考えることです。その過程で新たな発見が生まれます。学生には、社会生活の中で壁にぶつかった時にそれを乗り越えるための方法を考えられる力を、研究を通して身につけていってほしいと思っています」

 今後の研究については、次のように話します。

「脂肪細胞がDFAT細胞に変わるメカニズムをさらに追究していきたいと考えています。それは、実用化したときの安全性を高めることにもつながります。また、学生と一緒に考えることで、新しい研究の芽をつくっていきたいですね」
  • 皮下脂肪組織から単離した成熟脂肪細胞。これを適切な環境下で培養すると、脱分化脂肪細胞へ変化する。<br>(上)脂肪細胞、(下)脂肪細胞からDFAT細胞がつくられている様子。。

    皮下脂肪組織から単離した成熟脂肪細胞。これを適切な環境下で培養すると、脱分化脂肪細胞へ変化する。
    (上)脂肪細胞、(下)脂肪細胞からDFAT細胞がつくられている様子。

  • 脱分化脂肪(DFAT)細胞は、筋肉や神経など様々な細胞に分化できる。

    脱分化脂肪(DFAT)細胞は、筋肉や神経など様々な細胞に分化できる。

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