日本大学生物資源科学部

NUBS★GO!GO!

FACULTY
2014.8.29

FACE OF FACULTY

本学部の教員には、それぞれの専門分野に対する深い造詣やユニークな研究テーマを持ち、かつその分野にとらわれない幅広い活動を展開しています。ここではそうした教員の研究や活動などのエピソードについて紹介。彼らの素顔も垣間見られるかもしれません。そして私たちの身近なところにも教員たちの成果が息づいているかも。

古民家再生の道を切り開く TORU HORIE

profile

日本大学生物資源科学部森林資源科学科教授。東京工業大学工学部建築学科卒業、同大学大学院理工学研究科建築学専攻修士課程修了。博士(工学)。1986年日本銀行に入行。1993年から日本大学生物資源科学部助手、専任講師、准教授を経て2011年より現職。専門は木造建築学。日本建築学会木造建築構築法小委員会主査、NPO木の建築フォラム理事など歴任。趣味は旅行。

森林資源科学科 教授
堀江 亨

 「全国の古民家を全部見て歩きたい」。森林資源科学科の堀江亨教授は、そんな気持ちが募り、本学部で本格的に古民家の研究を始めました。

「現代の日本の住宅は、建物としての性能を追求するという考え方からすれば全国同じような形になってしまう可能性があり、実際そうなりつつあります。それに対し、古民家は『地域の証明書』と言われるように、地域の気候や植生などに応じた特色を持っています。木造建築である古民家に使用される木材は地元の森林の植生を反映しているし、部屋の間取りや構造には地域の気候や伝統的な暮らし方が影響しているということです」

 建築学を志した堀江教授が、現代の住宅よりも、地域の特色を反映する古民家に魅力を感じたきっかけは、大学の卒業研究で岩手県の古民家の増改築の事例を取り上げたことでした。その後、大学院修士課程で北陸地方・能登半島の古民家のデザインや構造を研究。修了後は、日本銀行で営繕(建築物の新築、修繕など)関係の仕事をしながら、日本の他の地域の古民家を見て歩くとともに、中国南部の貴州省やアメリカ西海岸、ヨーロッパなど世界各地の木造集落などを訪ねて見聞を広めました。
 1993年本学部助手に。そして1995年から日本全国の古民家を見て回る調査を本格的に開始します。それから約10年かけて調査した古民家の数は、400軒を越えるそうです。

「1999年、調査で全国を飛び回っていた頃ですが、NPO法人『木の建築フォラム』から、“古民家再生”の大家である建築家の降幡廣信氏による塾を始めるので、受講しないかとお誘いを受けました」

 「古民家再生」とは、降幡氏が使い始めた言葉で、古民家の特徴や使われている材木をできる限り生かしてリフォームすることです。近年、資源の有効利用や環境保全、また木造住宅の長寿命化の手段として注目されています。堀江教授は、この古民家再生塾に参加したことがきっかけで、古民家の構造だけでなく、古民家の保存・活用・再生へと研究の幅を広げていきます。

“お宝”の建物に潜入調査

 古民家研究の一環で“潜入”調査をしたこともあるそうです。対象は、「本郷館」という、明治38(1905)年に東京都文京区本郷の学生街に建てられた木造三階建ての下宿屋でした。堀江教授は本郷館の一室をセカンドルームとして借り、建物を図面にしたり、写真を撮るといった作業を行いました。

「本郷館は、建築好きの人々にとって“お宝”のような建物でした。ですが、部外者を絶対に中に入れないことで有名でした。見学人が出入りして下宿人の迷惑にならないように、という管理人の方の配慮だったのでしょう。しかし、そのために、本郷館の建物の図面や写真がほとんど記録されていませんでした」

 堀江教授の試みは大成功でした。建築に関心のある他の下宿人の方々とともにプロジェクトチームをつくり、建物の間取りや歴史的変遷を記録し、またそれを広く一般市民に公開する展示会も開催しました。

「我々が調査して数年経った後、老朽化して危ないということで、残念ながら本郷館は取り壊されてしまいました。しかし、ぎりぎりのタイミングで記録に残すことができたのはよかったです。仮住まいをしてまで調査した甲斐がありました」
用語研究は古民家再生の基本

 堀江教授は、全国の古民家を調査するうちに、あることに気づきます。

「古民家や古建築に使われている用語が統一されていなかったのです。例えば、家に入って目の前に立つ大きな柱を指して『これは大黒柱だ』と言って話を始めると、『いや違う、これはカマド柱だ』と言う人もいる。だからまず、『この場所にあって、こういう働きをするものを何と呼びますか』と聞いて、あらゆる用語を整理するところから始める必要があると思いました」

 そこで堀江教授は、木造建築の用語研究を始めます。各地の古民家の修理報告書を比較し、経験豊かな技術者に聴き取りを行いながら、用語の意味の違いを洗い出していきました。この研究には、実際の古民家再生にあたり、工事技術者たちの間の意思疎通を円滑にするという目的もありました。

「新築工事であれば、建物のパーツの呼び方はほぼ統一されているため、技術者同士の意思疎通にほぼ問題はありません。ところが過去にあった建物を生かして再生工事をする場合は、技術者たちの間でそれぞれのパーツをどう呼ぶかが共有されていないと、意思疎通が難しく、設計や工事の進行に支障をきたします。そういった意味で用語研究は、古民家再生には欠かせない、非常に基本的な部分である考えています」
  • 明治38年築の下宿屋・本郷館。現在は取り壊され、見ることはできない。

    明治38年築の下宿屋・本郷館。現在は取り壊され、見ることはできない。

  • 堀江教授が主宰する「木造建築学研究室」のゼミ合宿。新潟の古民家を再生した民宿で地産地消を体験する。

    堀江教授が主宰する「木造建築学研究室」のゼミ合宿。新潟の古民家を再生した民宿で地産地消を体験する。

  • PICK UP
  • STUDENT
  • FACULTY
  • 1/NUBS
  • OTHERS
  • ARCHIVE
pagetop