日本大学生物資源科学部

住まいと環境研究室

日本大学生物資源科学部くらしの生物学科

Laboratory of Landscape Architecture and Science Department of Bioscience in Daily Life,
College of Bioresource Sciences, Nihon University

Laboratory of Landscape Architecture and
Science Department of Bioscience in Daily Life,
College of Bioresource Sciences, Nihon University

卒業研究

テーマ 一覧

  • 011
    動物園における飲食サービスの実態と課題

    井福 絢音住まいと環境研究室

    【背景・目的】日本の動物園は、1990年代をピークに来園者数が大きく減少傾向にある。そうした中、観光分野においては誘客要因として飲食の重要性が高まっていることから、園内の飲食サービスの充実は、動物園に来園者を誘致する有効な一手段と考えられる。そこで本研究では、来園者の増加を目指した園内の飲食サービスのあり方について検討することを目的とした。

    【方法】JAZAに加盟する全国91箇所の動物園を対象としたアンケート(有効回答数:61票)、先進事例(3園)へのヒアリング、全国の一般消費者(サンプル数:522名)を対象としたインターネットアンケートを行った。

    【結果・考察】飲食サービスの提供側(動物園)を対象とした調査では、園内レストランでの美味しいメニューや地域の外食企業との連携によるサービスの提供は来園者増に効果的であること、飲食サービスの充実において人材不足を課題視していること等が把握された。一方、飲食サービスの享受側(消費者)を対象とした調査では、常にレストランを利用する来園者は25%程度である一方、回答者の7割以上が美味しい食事が提供されることで動物園への来園および園内レストランへの来店の意向を有すること、性別や年齢により求められるメニュー内容は異なること等が把握された。以上のような結果を踏まえ、①地元食材の使用など付加価値を高める以前に、基本的な食味レベルを高めること、②来園者の支払意志を踏まえ客単価1,500円以内のメニューを提供すること、③50歳以上や世帯年収の高い層には季節感、若い世代や女性向けには値頃感に配慮するなど、客層に応じたメニュー展開が必要になること、④地域の外食企業と連携してサービスを提供(レストランの業務委託、メニューのプロデュース等)すること、⑤地域住民に園内レストランのメニューをPR(地域のイベントへの出店等)しリピータ確保に努めることの5点を、来園者増を目指した動物園における飲食サービスのあり方として提案した。

  • 012
    江東区を事例とした都市景観行政と緑化の推進

    今橋祐大住まいと環境研究室

    【背景と目的】東京都作成のみどりの新戦略ガイドライン等の基準と現在のみどり率の比較から分かるように、都市部においてみどりは十分とは言い難い。この要因としては、都心部に新たなみどりを設ける土地を確保することが困難であること等が挙げられる。その対応にあたっては行政の積極的な取り組みと、建築物への緑化が重要であると考える。そこで本研究では、景観行政の動向や新規の建築物の緑化状況について建築用途等の視点から多面的に解析し、都市部にみどりを増やす方策について検討することを主な目的とした。

    【方法】建築物が盛んに建てられている江東区を事例とし、「景観専門委員会」の動向を中心に、過去5年間に建設された「大規模建築物(延べ床面積10,000㎡以上等)」と「景観重点地区の1,000 ㎡以上等の新規建築物」について事業者による景観計画届出書および緑化計画書をもとに、建築行為、景観指導、緑化状況等の実態を把握するとともに建築用途や地域別などの視点から解析評価を行った。

    【結果・考察】5年間で提出された景観計画届書の内、緑化状況が把握された届出は大規模建築物が49件、景観重点地区では22件、合計71件の建築物のデータが把握された。建築用途としては両者ともマンション等共同住宅が最も多いこと、大規模建築物は臨海部等に多く、開発面積の確保が困難な密集市街地の内陸部には少ないこと、景観専門委員会では緑化についての意見が大規模建築物、景観重点地区ともに多いこと、大規模建築物の緑化率に比べ景観重点地区の建築物は敷地面積が少ないこと等により緑化率が低いこと等の特性が把握された。したがって、今後、都市内の緑を増やしていくには景観重点地区の建築物に代表されるような中小建築物の緑化が特に重要であると考える。その場合のみどりの質的・量的向上を図るためには、地上部において大面積を必要とせず景観的にも効果のある壁面緑化等を推進することが効果的であり、その推進が重要であると考える。

  • 019
    自然染料による染色手法の現代的意義
    および染材としてのバラについて

    大谷紗希住まいと環境研究室

    【背景と目的】国内のファッション消費は、若年層を中心にSNSによる情報収集やネットショッピングなど、オンライン化が浸透している。しかしファッションが合理化されるほど、着装することで得られる付加価値がむしろ重要とされてきている。例えばその付加価値は、ライブ感やお洒落をすることの生き生きとした感情、作り手の想い、さらに染色が醸す豊かな情感などとして表現される。このような中、自然志向な社会的背景を受けて、今日では天然染料を使用した染色手法によるアパレル製品に注目が集まっている。本研究では、その天然染料(植物由来)による染色に焦点を当て、その社会的意義を模索すること、またそれらを企画販売する公益財団法人神奈川県公園協会が染材として採用しているバラの資源的有用性についても考察することを目的とした。

    【方法】調査は、関連分野業界(染色、園芸、流行色など)の書籍やweb情報を収集した。

    【結果と考察】既存の多くの染色産業は、機能性を付与した繊維製品の高付加価値化を実現する一方で、用水及びエネルギー多消費型産業であり環境対策が求められている。また流行色の側面では、1987年以降に地球環境保全の風潮の中でエコロジーカラー(自然の色合い)がブームとなり現在に至る。このような産業的・社会的要因おいて、天然染色手法の訴求・意義は高いと考えられた。またバラについてはその野生起源が約5,000万年前とも言われる考古学的植物であり、古代エジプトではその香料が金・銀・宝石以上に高価とされる資源的価値があったこと、さらに日本では国内野生種が万葉集に登場し、江戸時代頃より広く栽培され明治時代以降には輸入バラも合間って現代に至る花文化が形成された。以上の長い時代の中で花の香り・色味への審美的感情が醸成され、今日のバラに魅せられる多くの人々が生まれたと言える。このような歴史的・資源的・審美的観点などから、バラは現代ファッションにおける付加価値を生み出す染材植物として期待できると考えられた。

  • 022
    湘南地域における有形文化財の保全活用に対する関係者意識
    ~藤沢市藤沢宿を事例として~

    岡田侑里子住まいと環境研究室

    【背景と目的】今日では単に有形文化財(建造物)を保存するだけではなく、地域活性や観光の利用拠点とするなど地域らしさある保全活用が行われている。このような中、神奈川県藤沢市藤沢宿には有形文化財に登録・指定されている蔵・古民家が4件存在し、平成23年から藤沢地区郷土づくり推進会議が地域祭事と連携し、一般公開を含めた保全活用を試みている。しかし現状としては、建造物の認知度不足、所有者の意向確認不足、催事の広報不足などの幾つかの課題が挙げられているが、具体的検討が十分ではない。そこで本研究では、今後の本地域での保全活用計画づくりを支援することを目的に、推進会議と建造物所有者、一般の地域住民を対象に、現状の保全活用意識や課題について調査した。

    【方法】調査は関係者へのアンケートを行った。調査内容は、有形文化財への保全活用意欲、地域への保全活用の意義・価値、認知度、今後の保全活用体制や具体案などである。推進会議には調査用紙を郵送回収、一般地域住民には祭事での直接配布回収、所有者とは直接対面式ヒアリング調査とした。

    【結果と考察】推進会議(N=14)、地域住民(N=187)、所有者(N=5)の回答結果から、3者ともに保全意向は9割以上と高かった。また3者とも歴史的価値、地域の財産、観光資源、次世代に藤沢らしさを伝える媒体であることを有形文化財の存在意義として示していることが共通しており、今後の保全活用の方向性が明らかとなった。一方今後の保全活用の推進において、①地域住民の有形登録財への認知度の低さから特に若者層への広報周知が必要であること、②建築物の修繕・維持費確保のため行政による補助制度を積極的に活用・運用していくこと、③活動の成果や認知度向上の推移を行政に訴えかけていき、官民連携した保全活用を進めていくこと、④観光資源化によるローカルビジネスへの展開を検討し、地域振興に繋げていくことを目指す、などが必要であると整理できた。

  • 025
    海浜植物ハマボウフウ(Glehania littoralis F.Schmidt)
    保全を目的とした葉茎の機能性成分について

    笠島脩平住まいと環境研究室

    【背景と目的】ハマボウフウは多年生在来植物で全国の砂浜に自生し、葉身・葉柄・根は特有の香りがすることから郷土料理などに食資源利用もされてきた。しかし自生地となる自然海岸砂丘の減少や人為的な乱獲のために全国で急速に減少している。保全方法としては、自生地における個体の保護や競合種の除去は当然として、個体の持つ食資源としての機能性がより発揮される方法も模索するべきである。そこで本研究では、日本大学生物資源科学部5号館屋上で2017年10月から2018年3月の期間において、本種の保全育成の生育基盤として想定される自生地砂、園芸用土、砂+用土、人工軽量土、軽量土+用土の5区(各区6個体植栽)で育成した実生苗を用い、これらの個体葉茎の抗酸化能(アスコルビン酸の相当量)分析から比較検討した。

    【方法】抗酸化能の測定については、各区より3 個体を任意に選出し、個体を掘り起こして根の一部と葉茎を採取した。葉茎は、各個体より根元から新しい出葉1 枚を採取した。採取した検体は粉砕後にエタノール抽出し、遠心分離機を利用して固液分離を行った。その後DPPH 試薬と混合し516 nm の吸光度でDPPH ラジカル捕捉能を測定し(紫外可視分光光度計UVmini1240:島津製作所)、既往研究と同様にこれらの得られた吸光度からアスコルビン酸の相当量を算出した。以上を平均値および標準偏差値で整理し、抗酸化能の群間比較は多重比較分析(Tukey 法)による統計解析を行った。

    【結果と考察】各実験区の抗酸化能の平均値と標準偏差について整理した結果、抗酸化能においては葉茎の方が根部よりも全体平均で11.8 倍(砂+用土で5.3 倍、軽量土+用土では64.7 倍)と有意に高い値となった(P〈 0.01)。また各実験区の葉茎では群間に優位な差は無かったが、根では、実験区の間に有意な差があり(P〈 0.05)、砂+用土で比較的高い抗酸化能があった。自生地砂と園芸用土の混合土による実生苗育成が本種の抗酸化能を得る有効な方法であることがわかった。

  • 035
    自然資源を活かしたクラフトイベントによる
    公園利用者の増加促進について

    久米 悠住まいと環境研究室

    【背景と目的】国営公園では来園者の満足度をより高めるために様々なイベントが園内で行われているが、クラフトイベントに関する実施状況や利用者に及ぼす影響等についての把握・解析については十分とはいえない。そこで、本研究では国営公園を対象に自然資源を活かしたクラフトイベントに関わる実態を把握・解析し、クラフトイベントを通して国営公園の活性化及び公園利用者の増加促進に繋げる方策等について検討することを主な目的とした。

    【方法】本研究では、まず17箇所の国営公園に一次アンケートを郵送返信で行いクラフトイベントの有無や内容等の実態を明らかにした。次に一次アンケートの結果をもとに特徴がある国営公園を選定する。そして選定した国営公園を対象に、クラフトイベントへの参加者を対象に、満足度等を把握するための直接記入による二次アンケートを行い、公園利用等に対するイベントの影響力等を把握・解析した。

    【結果と考察】一次アンケートではクラフトイベントの開催回数や参加者人数等の特性を明らかにし、代表的な公園として「アルプスあづみの公園」と「昭和記念公園」の2か所を選定することが出来た。二次アンケートでは、両公園ともクラフトイベントの内容や料金、イベントで使用した自然の材料等に関わる利用者の評価は概ね「満足」という結果を得た。また今後のイベントの内容に関しては、子供の体験機会や変化あるイベント内容の充実、年中行事等との関連づけへの期待などが両公園に共通していた。一方、寒冷地の地方に位置するアルプスあづみの公園では来園のリピーターと共にイベントのリピーターも多いが、温暖な大都市近郊に位置する昭和記念公園では来園のリピーターは多いがイベントのリピーターは少ないことなどが把握された。したがって、国営公園それぞれが有する立地性や資源性、来園者の利用特性等の特徴を活かしたクラフトイベントの内容や宣伝方法を選択することにより公園利用者の増加促進を促せるものと考える。

  • 041
    江東区を事例とした都市景観行政と緑化の推進

    佐浦 匠住まいと環境研究室

    【背景と目的】東京都作成のみどりの新戦略ガイドライン等の基準と現在のみどり率の比較から分かる様に現在、都市部において、みどりが十分とは言い難い。この要因としては、都市部に新たなみどりを設ける土地の確保が困難であること等が挙げられる。このような課題の対策としては壁面緑化、ベランダ緑化、屋上緑化等の立体的な緑化方策も有効な一手法であり、東京都や区部でもみどり豊かな街づくりを行う上でこれらの方策を推進している。そこでみどりが有する多様な機能のうち、良好な都市景観の創出という面に着目し、立体的な緑化の設置状況による人々への印象評価等をもとに今後の緑化方策の検討を主な目的とする。

    【方法】建築物が盛んに建てられている江東区を事例とし、過去5年間に建設された建築物を用途ごとに分類し、最も建設数の多かったマンション等の共同住宅を対象とした。そして、現状の建築物の画像と建築物の「壁面」と「ベランダ・手すり」に緑化を施した画像を作成し、これらを一般市民に近い本学部生70名に見せ、SD法を用いて印象評価を行なった。また同時に好まれる壁面緑化の階層数を明らかにするため、階層に分けて緑化を施した画像を作成し印象評価を行なった。

    【結果と考察】「壁面」と「ベランダ・手すり」に緑化を施すことによって「快−不快」「美しい−醜い」といった項目ではあまり変化が見られなかった。その一方、「みどりが豊か−みどりが乏しい」「自然的−人工的」といった項目では、緑の存在が大きな影響を及ぼした。また壁面緑化については4階までの緑化、手すり・ベランダ緑化においては5階までの緑化が好ましいという結果が得られた。以上のことから、限られた敷地面積の中でみどりを増やし良好な景観を創出するためには、壁面やベランダ・手すり等の緑化が有効であること、特に中層階までの緑化が有効であることなどが把握された。したがって、このような緑化方策は、みどりが豊かな都市景観の創出にあたって有効な一方策であると考える。

  • 046
    浜なしのブランド力の維持・強化に関する研究

    鮫島真穂住まいと環境研究室

    【背景と目的】都市農業の衰退は、地域産業の低迷のみならず、農地の消失等に伴う都市環境の悪化を招く可能性もあり、継続的な営農の実現は全国各地で重要な課題となっている。本研究では、横浜市のローカルブランド品である浜なしを対象とし、営農の継続に資する浜なしのブランド力の維持・強化の方向性について検討・提案することを目的とした。

    【方法】浜なしの現状や課題等を把握するため、文献調査および生産者団体へのヒアリング、生産者に対するアンケートを行った。また、浜なしの市場ニーズや評価等を把握するため、バイヤーへのヒアリングと消費者へのインターネットアンケートを行った。

    【結果と考察】生産者側は、直接販売やファンの多さ等を強みとして認識する一方、品質の不均一さ、生産規模の小ささ等を課題視していること、販売チャネルの多様化や高級品としての流通を望んでいること等が把握された。販売者からは、フルーツ市場では品種の訴求がトレンドであり、主な購入者は高齢者や高所得者であること、高所得者層が重要なターゲットになることのほか、多品種・他品目との組合せによる宅配や体験を伴う庭先直売等の販売方法の工夫や、産地が一体となった取組の重要性などが指摘された。消費者側では、世帯年収が高いほど、梨を購入する際に産地を重視し百貨店を利用する消費者が多いこと、アイスやジェラートの加工品を食す傾向にあること等が把握された。また、年齢が高いほど、梨を購入する際に品種を重視すること、梨の加工品を食した経験が少なくなることに加え、浜なしの「みずみずしさ」を高く評価していること等が把握された。さらに、消費者の7割以上が浜なしを食したいとの意向を有しており、中高齢者を中心に浜なしの消費拡大には「体験農園の充実」「イベント開催」「お取り寄せサービスの充実」の必要性が認識されていた。以上を踏まえ、「ターゲット設定」「販売チャネル」「訴求ポイント」「加工品の製造」の4つの側面から、浜なしのブランド力の維持強化に資する方向性について提案した。

  • 047
    「公園植物廃材」を活用した
    染物アパレル商品開発と販促の検討

    椎名春菜住まいと環境研究室

    【背景と目的】公園管理では多くの場合は植物管理廃材にコストをかけ処分している。しかし生物多様性の保全や地域資源の利活用が望まれる今日の中で、公共空間より発生する自然由来廃材も一つの資源とし、リユースする方法を模索する必要性があるといえる。このような中、公益財団法人神奈川県公園協会では、園内で発生した植物廃材を利用した染物事業を展開している。染手法にはボタニカル・ダイを採用し、従来の草木染めには拘らない製品の開発に成功している。一方で、商品開発において課題があり、現状ではハンカチやバンダナなどといったデザイン性に単調さが目立つラインナップに留まり販売数は伸び悩んでいる。本研究では、このような公園植物廃材を活用した染物アパレル商品の開発とその販促を目的として事業展開へのニーズとテスト商品の販売・評価を実施した。

    【方法】アンケートによる調査を中心とした。まず一次アンケートとして、製品の印象、購買意欲、購入希望商品および購入限度価格に関する基礎調査を2017年12月8日・9日に東京ビックサイトでのエコプロダクツ2017で行った。次に2次アンケートとして、事業評価および一次アンケートを元に製作したテスト商品の評価、販売チャネルなどの具体的な販促項目について2018年11月24日・25日に神奈川県立大磯城山公園で行った。共に直接配布回答式のアンケートである。

    【結果と考察】一次アンケートの結果(N=60)、本染物製品は自然的であることに高い評価を得た。また、販売を希望する製品として身に着ける日用品へ需要が高いことが分かった。一次アンケートの結果を踏まえ実施した二次アンケートでは神奈川県公園協会の行う染物開発事業に対し好感度が高いことが分かった(N=61)。二次アンケートでは製品の評価も行ったが、製品の鮮やかな色に対する評価が高い結果が得られた。製品のデザインや素材の改善、ターゲットを絞った広報の実施、販売チャネルの多様化が今後の課題と考えられる。

  • 048
    江戸前ちば海苔と日本酒との
    コラボによる商品訴求の検討

    白石さやか住まいと環境研究室

    【背景・目的】ちば海苔の認知度を高め、消費拡大させるために「ちば海苔の販売促進に係るマーケット調査」が2017年度に実施された。その結果、「食べ方の明確性」が重要であり、特に日本酒とのセットで訴求することの有効性が指摘された。そこで本研究では、ちば海苔と日本酒との最適な組合せを見出すとともに、実際の販売に向けた課題やその対応策等について検討することを目的とした。

    【方法】ちば海苔は千葉県の木更津地区と富津地区、日本酒は千葉県の上総エリアの6蔵元を対象とし、2018年7月31日~9月19日にかけてヒアリングを2回ずつ実施した。ヒアリングを通じて選定したちば海苔と日本酒を、「きみつの地酒まつり」(2018年10月5日)と「BOSO SAKE PARTY」(2018年10月27日)の来場者に試食・試飲してもらうことで相性の良い組合せを抽出した。

    【結果・考察】試食・試飲の対象者の多くが千葉県居住者であることに起因し、日本酒との相性の良さが評価された海苔は、ちば海苔特有の種類で香りが高い「青飛び」及び「青混ぜ」であった。一方、飲酒量の減少に伴って少量で高価な日本酒の需要が高まり、フルーティで香りは強いが味わいに甘さと丸みがある純米吟醸や大吟醸が選択される市場動向の影響もあり、ちば海苔との相性の良さが評価された日本酒は「天乃原純米大吟醸」及び「東魁盛大吟醸」であった。そして、ちば海苔と日本酒の組合せとして最も高い評価を受けたのは、「青飛び×天乃原純米大吟醸」であった。このように、香りの高い海苔とその香りに負けない香りと甘味の強い日本酒との組合せが、消費者から強い支持を受けた。また、ちば海苔と日本酒とのセット販売の需要を喚起するためには、消費者ニーズに合致した量目(少量サイズ)の検討、ちば海苔の主なターゲット(20代・30代、都内消費者)への訴求に加え、量目やターゲットに応じたパッケージの制作、新たな販売チャネル(駅ナカ等)の検討・開拓、PR機会の創出と実施(青山マルシェ等)などが必要となる。

  • 053
    メダカをテーマとした学校ビオトープの
    教育的効果の検証について

    鈴木 翼住まいと環境研究室

    【背景と目的】生物多様性が社会に主体化される中で、学校ビオトープは地域生態系の保全や自然環境教育、また児童への情操教育の場として推奨されている。一方で関係者の専門知識や実践経験の有無、維持管理体制などによっては創出した生態系が消失する事例がある。本研究ではこのような課題解決の仮説として、1)教員・児童が学習し易い一般的な生物を扱う、2)小規模な生息・生育空間でも保全管理が可能で環境耐性のある生物を扱う、3)自然科学的・社会学的な学習の幅広さのある生物を扱う、4)愛着を持ち易い生物を導入種に含む、これら4点を満たす学校ビオトープであれば児童への教育的効果を保ち、創出した生態系の消失が回避できるのではないかと考えた。このような中、横浜市泉区上飯田小学校では、2017年よりメダカをテーマとした学校ビオトープを総合学習で行なっている。メダカは多分野の研究事例が多く、日本人にとって馴染み深い生物の一つである。そこで本研究では、当該校での学習に注目し、仮説の検証を行うこととした。

    【方法】児童・教員へのアンケートおよび学外者の支援状況より検証した。具体的には、児童には生態や自然保全意識などの教育効果が見受けられるか(2017〜2018年の学習児童対象)、教員に対して教育プログラム立案に対する労力や計画のし易さや課題など、支援者には活動に伴う時間・資材・費用などを把握した。

    【結果と考察】児童(N=52)へのアンケートでは学習期間に関わらず9割以上に高い満足度があった。また生態・形態・飼育・保全管理など幅広いメダカの学習項目に関心が及んだ。また教員からは本種が学習内容の展開がし易く、児童に関心・愛着の醸成を促しやすい種であること、しかし、活動規模や支援者の有無などによって労力の変動が見込まれることが挙げられた。学習支援者からは支援時間が学習全体の中で約3割を占めたが比較的余裕のある活動であったことなどが整理された。以上の検証の結果、メダカを対象生物とすることで充実した学校ビオトーププログラムを組むことが可能であると示唆された。

  • 060
    国内ツバメの保全意識向上に向けた研究

    長 優里奈住まいと環境研究室

    【背景と目的】ツバメ(Hirundo rustica Linnaeus,1758)は農村部で害虫を食べる益鳥や春を告げる季節象徴種として我が国において人と関わりの深い身近な野生鳥種である。一方、近年では営巣環境の変容や巣材・食資源の確保の場となる里地空間の縮退などにより減少種されている。既往研究では、渡りのメカニズム解明や巣材採集・採餌行動等の保全生態学的研究はあるが、保全意識向上に資する社会学的側面からの研究はほぼ見当たらない。そこで本研究では社会学的アプローチからツバメの保全策を検討することを目的とした。具体的にはツバメのねぐら入り行動の観察者を対象に、①ツバメの印象・魅力、②自発的に活動可能な保全活動、③保全意識の普及啓発効果のあるコンテンツを調査した。

    【方法】本研究は、日本野鳥の会が主催するねぐら入り観察会が行われた東京都六郷土手(2017年7月30日・8月6日)と日野市粟ノ巣みどりの広場(同年8月5日)の多摩川河川敷の2箇所を対象地とし、観察会参加者にツバメに関するアンケートを配布した。六郷土手では合計47部を、日野市では100部を配布した。

    【結果と考察】アンケート回収率は74.1%(有効回答数109)となった。男女比は女性が半数以上を占め、年代は40代~70代を中心に幅広い年齢層より回答を得た。ツバメに対する印象は、渡り鳥や子育ての姿、春の象徴などの回答が多く、90%以上の回答者が保全すべき種として認識していた。またねぐら入り行動観察によって、その観察経験の有無によらず89.9%の回答者が保全意識の高まりを示し、審美的価値や環境教育的効果があることが伺えた。一方で、保全への意欲に関わらず、余暇における保全活動の参加を望む回答者が約70%を占め、その多くが可能な活動として、巣の保護や基金への寄付を選択しており、保全意欲の異なる人身に合わせた保全策の検討が必要と示唆された。そのため環境教育プログラムやメディア戦略など、参加意欲を勘案した保全策に関わる知見も得た。

  • 061
    江戸前ちば海苔の市場評価に基づく販売戦略の検討

    塚本遥香住まいと環境研究室

    【背景と目的】千葉県の海苔養殖は200年続く伝統産業であり、生産される海苔は香り等に優れた高級海苔として流通し、「江戸前」を名乗れるなど確かなブランド力を有するものの、生産規模が小さいこと等から産業としての衰退が危惧されている。そこで本研究では、ちば海苔の生産状況等の実態に加え、マーケットにおける認知度や評価等を把握し、今後の消費拡大に資する基本的な方向性について提案することを目的とした。

    【方法】ちば海苔の生産状況等を把握するための資料調査、市場ニーズ等を把握するための専門家ヒアリングおよび一般消費者を対象としたアンケートを実施した。アンケートは大山千枚田(鴨川市)の収穫祭とFarmer’s Market @ UNU(渋谷区)の2会場で行った。

    【結果と考察】ちば海苔の生産量・枚数、経営柵数・体数、生産金額は、直近10年で顕著に減少している。海苔市場に精通する専門家からは、情報発信力の高い都内消費者を主なターゲットとし、旨味・口溶け・香りを集中的に訴求することや、そうした特徴を活かした食べ方提案をすること等の必要性が指摘された。一般消費者の海苔の購買行動としては、購入する際にポイントを絞れない消費者が一定量存在すること、購入して困る点は「美味しい海苔の選び方」「保存方法」であり、20代以下の約4割は「歯に付く」ことを懸念していること等が把握された。認知度は東京都居住者でも5割程度はあるものの、30代以下の若い世代では低く、購入・消費経験も少ないこと等が把握された。試食評価に関しては、特に「香り」と「歯切れ」が食味に対する総合満足度を高める上で重要な要因であることが把握された。また、都内消費者や若い世代に効果的な訴求ポイントとしては、「江戸前」「生産者のこだわり」「青混ぜ海苔」等が抽出された。以上を踏まえ、新たなターゲットの設定、価値の明確化、新たな販売チャネルの開拓、消費を促す食べ方提案の充実、地域連携による取り組みの強化など、今後の消費拡大に資する7つの方向性を提案した。

  • 063
    江戸前ちば海苔の産地側評価に基づく販売戦略の検討

    唐下明子住まいと環境研究室

    【背景・目的】千葉県が策定した「千葉県海苔販売促進基本方針」を受け、2018年2月に「ちば海苔の販売促進に係るマーケット調査報告書」(以降、昨年度調査)が提示された。当該報告書では、消費側と産地側の双方のニーズ等を踏まえた販売戦略の必要性が指摘された。そこで本研究では、ちば海苔の生産者と問屋の販売促進に対する関心やニーズ等を把握し、消費側を対象とした調査結果と比較分析することで、実行性の高い販売促進方策について提案することを目的とした。

    【方法】ちば海苔の生産者、ちば海苔を取り扱う問屋を対象に、2018年6月15日~2018年7月13日にかけてアンケート(問屋の一部はヒアリング)を実施した。

    【結果・考察】昨年度調査で設定したターゲットのうち、「都内消費者」「20代・30代」「コアなファン」は産地側でも強い開拓意向が確認された。同じく販売チャネルに関しては、「通信販売」「各種イベント」「そば屋」を産地側は重要視していた。さらに、昨年度調査と一致した各ターゲットの訴求ポイントは、「千葉県民・年配層」に対しては「産地(千葉県産)」、「都内消費者」に対しては「香りの良さ」、「20代・30代」に対しては「レシピの豊かさ」、「コアなファン」に対しては「香りの良さ」「青混ぜ海苔」「初摘み」、「外国人」に対しては「健康・ヘルシー」「漁場等生産現場の風景」であった。加えて、昨年度調査でちば海苔と相性が良いとしてあげられた食材のうち、「乳製品」と「やまいも」は産地側でも高く評価された。この他、主に産地関係者で構成される意見交換会を活動のコミュニティとすることへの期待や、安定供給の実現には生産・品質の安定、ブランド構築等に関する対応が求められていること等も把握された。以上の結果より、消費者と産地の双方のニーズを踏まえた今後3年間(2019年〜2021年)の販売促進方策(活動内容、訴求ポイント、商品提案等)を、ターゲットおよび販売チャネルごとに提案した。

  • 070
    都市郊外における多目的型ミニシアターの利用者動向と
    満足度因子に関する研究

    根津里菜住まいと環境研究室

    【背景と目的】映画館は経営的見地やその存在効果の継続において3つの課題に直面していると考えられている。1つ目は、映画館の価値を再確認させること。2つ目は、ターゲット層を的確に選ぶこと。3つ目は、地域に与える社会的経済的な意義を開拓することである。このような中、新たにコミュニティー再生や商店街活性化の拠点として、小規模ながら地域に近い存在として経営される多目的型ミニシアターに注目が集まっている。しかし、このような多目的型ミニシアターを対象とした研究事例は少ない。そこで本研究では、本施設の利用者層や利用者動向、満足度因子を捉えた経営的見地からの基礎的知見を得ることを目的とする。

    【方法】調査は、神奈川県藤沢市シネコヤ(2017年12月1日~1月31日)と埼玉県深谷市深谷シネマ(2018年6月1日~7月31日)を対象に、施設内にアンケート用紙と回収箱を設置し行った。設問項目は、属性や来店頻度、利用目的、利用形態、5段階による満足度評価、他自由記述回答等の全12項目とした。

    【結果と考察】計235名より回答を得た。2箇所の調査結果の類似点として、40代から60代の利用率が高く、その過半数が主婦や会社員であった。また男女問わず、単独での利用が大半を占めていた。利用目的では映画鑑賞を主目的としつつ、2〜3時間未満の時間を個々に自由に過ごす利用動向が明らかとなった。このような利用状況を既往研究と比べると、本施設がサードプレイス的空間として位置付けられると考えられた。また満足度に影響を与える要因に、「映画作品のチョイス」(P〈 0.01)や「落ち着きやすさ」(P〈 0.01)等が抽出された。単独での来店形態が利用者の大半であることから、これらが滞在時間の中で満足度を高めるに必要な因子の一つと考えられた。また調査対象地が閉鎖される写真館や蔵をリノベーションし経営されていることからも、多目的型ミニシアターが一地域に経済効果や地域活性をもたらす「マチのビジネス」として機能しているとも考えられた。

  • 071
    東京都大田区内の小規模児童公園の利用促進
    ~ふれあいパーク活動に注目して~

    野上洋輔住まいと環境研究室

    【背景・目的】都市公園は、自然環境の保全や人間生活の憩いやうるおいを享受するだけの場所ではない。公園への官公民の関心が高まるにつれ、今日では様々なパークマネジメントが行われている。しかし、少子高齢化や人口減少などの社会的変化によって、都市公園の中でも特に小規模な公園(街区公園、児童公園など)では利用者の減少や管理の行き届かない状況が生まれている。既往研究では、公園利用者から抽出したニーズに合わせて改修・修繕を検討・実施した知見も増えているが十分とは言えない。このような中、東京都大田区においても、区内の小規模公園の利用状況に偏りが顕在化している。そこで,本研究では、当該公園において、ふれあいパーク活動事業に参加するボランティア団体を対象に、今後の区内小規模公園の利用促進に資する計画要素を抽出することを目的とした。公園ボランティアを対象とした小規模公園の利用促進を検討した研究は少ない。

    【方法】区内で活発に活動している23団体の代表者を対象に、アンケートを試みた。アンケート内容は、属性、活動する小規模公園の強み・弱み・機会・脅威といった現状分析要素、利用促進の方針案などに関する記述・選択回答式とした。得られた結果はSWOT分析などから整理した。

    【結果・考察】12団体からのアンケート回答の結果、計107の記述より以下のような利用促進計画案が検討できた。①まずは喫煙やごみのポイ捨てのようなマナー違反等、改善の実現性の高い課題を解決することから着手し、利用者が公園に来園しづらい状況を取り除いていくこと、②次にボランティアや周辺施設(保育園・学校等)より公園の来園者を誘致することで、来園者や管理の支援者を徐々に確保すること、③このように公園の存在を意識する周辺住民による日常的利用の促進、また季節毎・地域範囲の催事などから利用者層や利用目的の多様化を促し、能動的に小規模公園の利用促進を行う、などである。

  • 083
    供給サイドのニーズに基づく
    藤沢産葡萄「藤稔」のブランド化の検討

    深田侑希住まいと環境研究室

    【背景・目的】生産規模が小さいために、市場浸透に苦戦するローカルブランドは全国各地に存在する。藤沢市で品種改良された葡萄「藤稔」も、収穫量が少ないことや収穫時期が短いことなどにより、ブランド化が進展しない状況にある。そこで本研究では、藤沢産葡萄「藤稔」を対象とし、生産や流通等の現状と課題を明らかにした上で、今後のブランド化のあり方について提案することを目的とした。

    【方法】生産・流通の実態や葡萄に関する市場の動向やニーズ等を把握するため、関連データの整理に加え、藤沢市内の葡萄農家5件とバイヤー3件を対象にヒアリングを行った。

    【結果・考察】生産者は、食味や粒の大きさ、直接販売、大消費地が産地であること等を強みと認識する一方、種なし葡萄などトレンドとの相違、不均一な品質、小規模な生産量、短い収穫時期等を課題視していることが明らかになった。流通関係者は、種なしで皮ごと食べられる品種や品質の安全性等を重視していることが把握された。また、他品種とのセット販売、収穫体験やBBQを伴う観光農園などの必要性、富裕層をターゲットにすることの有効性等が指摘された。これらの結果を踏まえ、今後のブランド化のあり方として、次の5点を提案した。①主なターゲットを「藤沢市に居住する中高齢者および高所得者層」を設定した。②重視すべき販売チャネルとして、カフェ等飲食店でのメニュー化、ネット販売、BBQなど体験を伴う観光農園の開設・充実等を挙げた。③最近のトレンド品種とのセット販売や、特に高齢者向けに粒単位(小包装)で販売するなど、販売方法の工夫が必要となる。④産地のブランド力を高めるには、粒の大きさ等に関する品質基準の設定が求められる。⑤大粒であることや藤沢産であることに加え、ターゲットが重視する「みずみずしさ」「甘さ(糖度)」、女性には「産地」や「品種」、男性には「甘さ」や「糖酸比の良さ」等を訴求することが効果的である。

  • 089
    海浜植物ハマボウフウ(Glehnia littoralis F. Schmidt)
    育苗・育成方法の検討について

    前田航希住まいと環境研究室

    【背景と目的】ハマボウフウはセリ科ハマボウフウ属の多年生在来植物で北海道から南西諸島までの全国の砂浜に自生し、葉身・葉柄・根は特有の香りがすることから郷土料理などに食資源利用もされてきた。しかし自生地となる自然海岸砂丘の減少や人為的な乱獲のために全国で急速に減少している。保全方法としては、自生地における個体の保護や競合種の除去は当然として、自生個体より採取した種子をオフサイトで発芽育成させ、その実生苗を自生地または代替地に植栽することが想定される。そこで本研究では、本種の移植技術向上を目的に、特に本種の越冬から翌春の出葉までの実生苗の生育生態をおった事例が無いことに注目して研究を行った。具体的には各種土壌基盤における実生苗個体生育の実験とした。

    【方法】実験は日本大学生物資源科学部5号館屋上おいて2017年10月から2018年10月まで実施した。供試植物は自生地砂を生育基盤として発芽・育成された生育1年未満の実生苗とし、自生地砂、園芸用土、砂+用土、人工軽量土、軽量土+用土の5区を設定してその生育を追った(各区実生苗を6個体植栽)。測定項目は、環境調査として土壌温度と土壌含水率を調査し、生育調査として緑葉個体数(生残個体数)、個体ごとの葉数、草高、SPAD値を求め測定日毎に平均値および標準偏差で整理した。測定は1週間に1〜2回行った。

    【結果と考察】生育調査より、生残個体数、葉数、SPAD、開花率においても自生地砂+用土区が最も生育が良いことから、自生地砂と園芸用土の混合土による実生苗育成が本種の越冬実生苗の個体成長を得る有効な方法と考えられた。この要因としては、生育基盤に生長に必要な土壌養分が一定量含まれていたこと、また環境条件からみれば土壌含水率では他の実験区よりも水はけの良い状態にあったことが推察される。実生苗の時期により成長が確保されていれば、自生地または代替地への移植をより円滑に進めることができるものと考えられる。

  • 093
    都市鳥の保全意識向上を目的とした普及啓発ツールの制作
    ~スズメを対象種として~

    三鍋穂波住まいと環境研究室

    【背景と目的】スズメ(Passer montanus)は、人間の生活環境に適応した野鳥の1種であり、また、数多くの歌、音楽、絵、巻物など文化・芸術作品に登場する我が国を代表する生物の1つといえる。しかし、現在国内における本種の個体数の減少が危惧されている。減少理由としては、気密性の高い住宅の増加による営巣環境の悪化などが挙げられている。これに対し、個体数推移や国内分布把握などの保全生態学的研究は行われているが、普通種という認識からその保全意識向上に向けた社会学的研究は行われていない。そこで本研究では、本種の印象評価の定量化などから、特に保全に向けた消費行動・経済活動に注目した経営的見地からのアプローチ(保全意識向上に資する啓発ツールの制作)を目的とした。

    【方法】本研究は、公益財団法人日本野鳥の会と共同して進めた。まず、本種の印象評価や魅力的な行動など、啓発ツールの製作に必要な基礎情報の収集のため、2018年4月20日~8月31日に野鳥の会発行の無料配布小冊子「こんにちはスズメ」の申し込み者に対してアンケートを実施した。設問項目は「本種の印象、好きなしぐさ、他の鳥にはない魅力、購入希望規格・製品デザイン、購入検討価格」など10項目とし、その結果から啓発ツールの製作を試みた。

    【結果と考察】回収した1144部のアンケート結果から、印象・しぐさの分析から男女・年齢なく本種への認識は偏向・凝固している状況がわかった。そこで、回答の多かった「可愛い」というイメージ、本種の「威嚇」や「喧嘩」といった意外性のあるしぐさ、また「住処の隙間」など保全意識向上に関わる要素を組み込むことをコンセプトに啓発ツール製作することとした。啓発ツールは若年層をターゲットとしてSNSスタンプとし、上記のコンセプトから16種を製作した。日本野鳥の会との共同作品として販売を開始し、今後、購入者の保全意識の高まりや経済活動・保全活動への影響度を精査することが課題である。

  • 098
    消費者ニーズに基づく
    藤沢産葡萄「藤稔」のブランド化の検討

    村松彩音住まいと環境研究室

    【背景・目的】生産規模が小さいために、市場浸透に苦戦するローカルブランドは全国各地に存在する。藤沢市で品種改良された葡萄「藤稔」も、収穫量が少ないことや収穫時期が短いことなどにより、ブランド化が進展しない状況にある。そこで本研究では、藤沢産葡萄「藤稔」を対象とし、消費者ニーズを明らかにした上で、今後のブランド化のあり方について提案することを目的とした。

    【方法】葡萄および藤稔に対する消費者ニーズ等を把握するため、藤沢市に居住する20代以上を対象としたインターネットアンケートを行った。サンプルの抽出は、性別および年齢が均等になるように抽出し、最終的には311名より回答を得た。

    【結果・考察】シャインマスカットなど種なしで皮ごと食せる品種が人気であること、藤稔の認知度は3割程度であり、年齢と世帯年収が高いほど認知度が高くなること、消費者の9割以上が藤稔を食べたいと思っており、その消費意欲は年齢が高いほど高くなること、藤稔を食べたことがある消費者の9割以上が食味を高く評価していること等が把握された。また、今後の消費拡大に対しては、「大粒品種」や「藤沢産」を強く訴求する必要性を認識していること、特に60代以上は粒単位(小包装)での販売、高所得者層は飲食店でのメニュー化、通信販売の充実および体験農園の開催・充実を求めていること等が把握された。以上の結果を踏まえ、①「藤沢市に居住する中高齢者および高所得者層」を主なターゲットとして設定した上で、②地元の飲食店、ネット販売、体験(収穫、BBQ等)を伴う観光農園など販売チャネルを多様化すること、③ターゲットが重視する「粒の大きさ」「みずみずしさ」「甘さ(糖度)」を強く訴求すること、④「品種」を重視する中高齢者層向けにシャインマスカットなど人気品種とのセット販売を行うことや、少量販売を求める中高齢者向けに「粒単位(小包装)での販売」を行うこと等を、藤稔の今後のブランド化のあり方として提案した。

  • 105
    神社を中心とした地域産業振興に関する
    取組の過程と成功要因について
    〜報徳二宮神社を事例として〜

    山崎あこや住まいと環境研究室

    【背景・目的】人口減少、少子高齢化が進む中、全国各地で地域産業の衰退が危惧されており、昨今、その解決策として神社を中心とした異業種連携が注目されている。本研究では、神奈川県小田原市にある報徳二宮神社を対象とし、地域農業の振興を目的とした小田原柑橘倶楽部の異業種連携活動の現状や変遷を把握・分析し、成功要因を明確にするとともに、今後の神社を中心とした産業振興のあり方について提案することを目的とした。

    【方法】文献調査により小田原柑橘倶楽部の活動概要を把握し、活動の現状と変遷を整理した。つぎに、関係者へのヒアリングを通じ、主要な活動を抽出した上で、各活動のスキーム、資金調達、課題と解決策、成果等を把握・整理した。

    【結果・考察】2010年に発足した小田原柑橘倶楽部は、発起人である報徳二宮神社の宮司等が中心的な役割を担いながら活動を展開し、2015年には地域の企業等の出資により法人化した。農家と企業との関係性の調整に苦慮しつつも、自主財源を基本とした活動を継続し、特徴的な商品の開発・販売、地域における人的ネットワークの拡大などを中心に多くの成果を生み出してきた。こうした小田原柑橘倶楽部の活動の成功要因としては、①御祭神の教えをベースに実行したこと、②地域に信頼される神社が主体的に参画したこと、③異なる視点を持ち地域をよく知る人物が連携して中心的な役割を担ったこと、④ニーズに対応した商品開発や事業展開を行ったこと、⑤諸活動を通じ倶楽部自体のブランド構築に取り組んだこと等があげられた。以上の成功要因等を踏まえると、①神社が繋ぎ手となった地域の人々との交流、異業種連携の構築、②固定概念にとらわれない柔軟な発想に基づく活動の展開、③企業や自治体など外部資源の活用によるビジネス性の向上、④地域住民の心の豊かさを追求する取り組みの展開の4点が、神社を中心とした産業振興の実現において特に重要になると示唆された。