相同組換えとは

 

生物が自ら制御して遺伝情報を再編成することを遺伝的組換え (Genetic recombination)といいます。

遺伝的組換えは,さらに以下の5種類に分けられます。

1, 相同組換え(Homologous recombination)(=普遍的組換え(general recombination))

2, 部位特異的組換え(Site-specific recombination)

        [特定の部位で起こる組換え:酵母の性転換や抗体形成過程で行われる]

3, トランスポゾン(Transposon)[DNA断片が染色体上を動き回るような組換え]

4, 非相同末端結合(Non-Homologous End-joining (NHEJ)) [二本鎖DNA切断された末端を結合させる。

  高等動物では主要な経路。欠失が起こりやすいとされているが、最近欠失が起こりにくい機構が

    示唆され、研究が進めらえている。さらに相同組換えに関与するタンパク質(酵素)が関与している

 ことも示唆されてきています。]

5, 非正統的組換え(Illegitimate  recombination)[上記以外の組換え]

 

 相同組換え(相同的組換え)は,DNAの塩基配列がよく似た部位(相同部位)で起こる組換えです。 様々な化学物質や放射線により切断されたDNAは主に相同組換えによって修復されます。また,減数分裂に伴い高頻度で起こり、相同組換えがうまくいかないと配偶子が形成されません。

相同組換えの分子メカニズムが明らかになってきたのは1980年代頃からですが,応用面では20世紀初め頃から始まっています。相同組換えは染色体上のどこでも同じ頻度で起こるという仮定(現在は偏りがあることが解っている)から,モーガンは,組換え頻度の差から遺伝子の距離を計算し,遺伝子地図を作成しました。1915年までにショウジョウバエの85個の遺伝子について染色体上の位置を決めています。近年では,遺伝子破壊(遺伝子ノックアウト)がよく行われていますが,これは相同組換えを利用したものです。

 私は,相同組換えを制御して染色体レベルでの遺伝子操作をさらに容易し,遺伝病の治療に役立てたいと考えています。そのために,相同組換えの分子メカニズムの解明を目指しています。

 相同組換えは,交叉(crossing over)と遺伝子変換(gene conversion)に分けられます。 簡単に言えば,交叉は二本の染色体上の遺伝情報が入れ換わること。遺伝子変換は二本の染色体上の遺伝情報のどちらかが増減することです。

相同組換えの分子メカニズムを説明するために以下のような「二本鎖DNA切断修復モデル」が提唱されています。これはホリデーモデルをさらに発展させたもので,現在,多くの研究者に支持されています。

現在,私は「真核生物の遺伝子相同的組換えの分子機構の解明」というテーマを掲げ,相同組換えの生化学的な側面からの研究を行っています。相同組換えにおいて細胞内の長大なゲノムDNAから如何に塩基配列の似ている部位を探し出すのか ~相同なDNA鎖の検索と対合を行う過程(「相同対合」homologous pairing)~ について解析を行っています。研究方法は,出芽酵母を材料として, まず 相同対合に関与しているタンパク質(Rad51, Rad52, Rad54, Rad55, Rad57, Rad59, RPAなど)を精製単離します。続いて,試験管の中で それらのタンパク質と2種類のDNAを混ぜ合わせて相同対合を再現させます。このような方法を用いてそれぞれのタンパク質の役割を明らかにすることにより,相同的組換えの分子機構の解明を目指しています。


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