佐藤ゼミ

フードシステムはどのようにマネジメントされるか

佐藤ゼミのリサーチテーマは、「フードシステムはどのようにマネジメントされるか」です。食卓から農場に至るフードシステムには、食品小売業・外食産業(フードサービス)から、食品卸売業・食品製造業・農水産業まで、さまざまな産業企業が介在し、相互に関係しています。これらの経営組織は、フードシステムにおいて、それぞれどのように自らのミッションを果たし(成果を挙げ)ているのでしょうか。
現地調査の前に、毎週のゼミでは、フードシステムとマネジメントに関する内容について、各自プレゼンテーションとディスカッションを行うなど、アクティブラーニング形式で理解を深めました。現地調査は、2年次学生10名、3年次リーダー学生3名、教員1名(佐藤奨平専任講師)で、以下のとおり3泊4日の行程で実施しました。

【1日目】

◯株式会社ねぎしフードサービス
午前は、株式会社ねぎしフードサービス(東京都新宿区)を訪問し、根岸榮治代表取締役社長による「100年企業への理念経営と人財共育PDCA」に関する特別講義を、相良治美常務取締役、石野直樹執行役員人財教育部長にも同席いただきながら受講しました。同社は、都内を中心に41店舗(2019年8月現在)を展開する「牛たん・とろろ・麦めし ねぎし」を経営しています。同社の価値前提経営の取り組みは、日本経営品質賞や農林水産大臣賞等の受賞にも表れているように、高く評価されています。これまで大学のゼミでは、経営組織のマネジメントのあり方を学んできましたが、社長の講義で、実際の経営組織においてマネジメントがどのように機能しているかを理解することができました。経営トップとの直接対話は、長く記憶に残る経験になったことでしょう。ねぎしの店舗研修では、店舗空間・調理工程・接客等の様子を観察すると同時に、これから訪問する千葉県多古町で作られた大和芋が、どのように調理・提供されているかを視察しました。ねぎしの牛たん定食のとろろの原料は、すべて多古町産の大和芋です。

◯多古町役場
午後は、新宿から成田国際空港を経由して、多古町役場を訪問しました。役場では、地方創生課木内正巳課長から多古町の概況・魅力についてご紹介いただき、産業経済課小野田正之課長、同課農業振興係木内輝芳係長を交えて、地域経済・産業に関するヒアリング調査を行わせていただきました。

【2日目】

◯大和芋圃場
午前は、多古町名産である大和芋の圃場の視察調査を行いました。千葉県香取農業事務所の香取茂男主任上席普及指導員より、大和芋の栽培特性、圃場設備等について解説いただきました。暑いなかスプリンクラーで勢いよく散水する様子は、じつに爽やかでした。圃場では、自動かん水設備の実証試験も行われており、最先端農業の実態を確認することができました。「農業」に対するイメージが変わった瞬間でもありました。

◯落花生農家
続けて、落花生農家である秋山農園を訪問しました。落花生は千葉県の名産品です。農園では、落花生の収穫を体験しました。土の中に生えている落花生は、丁寧に引っ張り出したのち、逆さにして置いておきます。本来であれば、これを集め、積み上げて自然乾燥させますが、今回は「ゆで落花生」用として実を外していきました。落花生の収穫は全員が初めてのことでしたが、タオルで汗を拭きながら、もくもくと作業にあたりました。

◯道の駅多古
昼は、多くの利用者で賑わう道の駅多古を訪問しました。直売施設では地元農産物・食品等の特産品が販売されており、併設するレストランでは地元の多古米や大和芋等を活用したメニューが提供されていました。食の6次産業化(1次×2次×3次産業)プロデュースの実際を確認することができました。

◯株式会社農
午後は、食品ビジネスの経営実態調査を行いました。はじめに、株式会社農(みのり)を訪問しました。同社では、契約農家の生産物を全量買い取り、生産から加工・販売までをつなぐ先端的な取り組みを推進しています。2019年には、取り組みの鍵を握るセントラルキッチンが多古町に設置されました。同時に注目されるのが、ハラール食品の製造・販売事業です。海外からのインバウンドが増加するなかで、新たなニーズに対応できる「made in Japan」の食品ビジネスが創出されていました。来年開催の2020年東京オリンピック・パラリンピックとその先を見据え、食品ビジネスのレベルアップとイノベーション創出が図られています。

◯有限会社ジェリービーンズ
続けて、有限会社ジェリービーンズを訪問しました。同社では、「安全・安心・おいしさ、そして未来への挑戦」を新たな経営理念に掲げ、ブランド豚肉「元気豚」の生産・加工・販売を行っています。若手経営者である内山裕貴専務取締役より、同社の事業内容のみならず、海外・日本の養豚事情、元気豚の食材特性等についてご教示いただきました。こだわりの飼養方法が、元気豚のやわらかい肉質を実現しているといえます。若手経営者の言葉は、食品ビジネスの起業を目指す学生を刺激することになりました。

◯秋山農園
視察調査後は、落花生農家である秋山農園が経営する飲食店で、今回のフィールドリサーチの報告会を兼ねて交流会を行いました。自分たちで収穫した落花生を、ゆでていただきました(あとをひきます)。ありがたいことに、食べることの多い一日だったかもしれません。フードシステムの(みず)うみ・川下から、川中・川上へと一気に遡っていきました。

【3日目】

◯調理ワークショップ
午前は、多古町うまいもん委員会のご協力を得て、地元食材を活用した調理ワークショップを行いました。ワークショップとは、参加者自身がディスカッションや協働作業を通じて、学びを深めたり、合意形成や問題解決を図ったりしようとする場です。今回の調理ワークショップの目的は、多古町の地元食材の特性を把握するとともに、今後の新料理開発の参考データを得ることでした。多古米を使用した玄米サラダとタコパエリア、元気豚の大和芋巻き、スイーツとして大和芋のパンケーキとさつまいものスコーンを作り、試食・評価を行いました。太田まさ子会長(多古町商工会女性部部長)、高橋君江副会長はじめ、うまいもん委員会の皆様には、調理ワークショップのファシリテーションをご担当いただきました。

◯経営ワークショップ
午後は、多古町商工会との共同で、経営ワークショップを行いました。四つのチームに分かれて、マーケティング戦略の視点から、地元食材を活用した弁当新メニューの企画・提案を行いました。一般向けの弁当だけではなく、あっさりでも栄養満点の高齢者向けの弁当、ボリューム満点の働く人向けの丼物、贅沢志向の松花堂弁当など、複数の企画案についてプレゼンテーションが行われました。経営ワークショップのファシリテータは、教員が担当させていただきました。

【現地調査後】

現地調査から一か月半後の10月、多古町役場産業経済課・多古町商工会・多古町うまいもん委員会の皆様が、大学を訪ねてくださいました。食品ビジネス学科プレゼンテーションルームにて、経営ワークショップの続きを行いました。このプロジェクト計画は今後も引き続き推進し、研究の成果は多古町などで発表させていただく予定です。

経営トップによる特別講義(株式会社ねぎしフードサービス)
大和芋圃場での自動かん水試験(千葉県香取農業事務所)
初めての落花生収穫(秋山農園)
セントラルキッチンでのハラール食品製造・販売事業の視察調査(株式会社農)
調理ワークショップ(多古町うまいもん委員会)
経営ワークショップ(多古町商工会)

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