片上ゼミ

フードツーリズムのもつ多様な可能性について学ぶ

片上班(フードツーリズム論研究室)は、奈良県吉野郡下市町・大淀町・奈良市にてフィールドリサーチを行いました。同町のフィールドリサーチでは、各地域が独自にもつ地域ならではの食(フード)を対象とした観光(ツーリズム)のあり方、つくり方等を、地域の文化、歴史、環境、地産地消、安全等の立場から学びを深めていくことで、「自らの生活に活かすことができる観光」の在り方について、調査することを目的としました。

フィールドリサーチ1日目は、下市町の概要をはじめ、地域の課題や取り組んでいる事業について、下市町地域づくり推進課の方々から詳細なお話を聞いた後に、下市町役場の各課の取組みについて見学させて頂くとともに、明日香村で藤原京の遺跡から出土した木簡をもとに再現された古代・飛鳥の料理についての体験と見識を深めました。

フィールドリサーチ2日目は、下市町の食材を用いた郷土料理づくりに取り組みました。郷土料理づくりは、前期の授業を通じて学びを深めた知識を踏まえて、奈良の代表的な郷土料理の柿の葉寿司を柿の葉の収穫から行い、酢飯と塩鯖、塩鮭を柿の葉で包んでつくりました。元来、下市町は柿の生産地でありますが、そうした柿の実の生産に加えて、柿の葉を栽培する事業が行われており、そうした柿の葉を使用した柿の葉寿司づくりの在り方について学びを深めました。加えて同町で割り箸づくり体験実習を行いました。同町は割り箸づくりの発祥の地として知られている地域で、吉野杉の原木を建築製品等に製材した後に残る外側の背板と呼ばれる利用度の少ない部分だけを再利用して割り箸が作られています。
また割り箸には一般的に手にする元禄(げんろく)箸に加えて、天削(てんそげ)箸(割り箸の天の部分を鋭角的に削ぎ落とし木目の美しさを出したお箸)、利休(りきゅう)箸(両端を同じ細さに削り、握りの部分を平らにし、握りやすさに配慮した形であるとともに、両先端が使えるので箸を持ち替えることなく取箸としても使用できるお箸)があり、いずれも下市町が発祥の割り箸になります。こうした割り箸づくりの製造工程について学びを深めました。

フィールドリサーチ3日目は、大淀町と奈良市に足を運び、大淀町で番茶の生産、奈良市でお茶全般の製造工程や歴史・文化について調査させて頂きました。お茶については、例えば私たちがよく知る煎茶製法は、茶葉を摘んで蒸して揉み、温風で乾燥させたものをいいます。こうした蒸し製の煎茶が民間に出回るのは江戸時代の中頃以降で、番茶の歴史は煎茶よりも古く、日本茶の原型ともいえる姿を留めています。そのような番茶づくりの現場に訪れ、生産方法や淹れ方等について調査させて頂きました。またお茶全般の調査として、様々な種類のお茶の淹れ方や淹れる際の温度による味の変化などについても体験し、大和茶(奈良県大和高原を中心とする地域で生産されるお茶の総称)について広く学びました。

下市町、大淀町、奈良市でのフィールドリサーチは、各町の方々や地域のNPOの方々のご支援により、終始和やかな雰囲気の中で学びを深めることができました。この度のフィールドリサーチについてご協力、ご支援して頂きました皆様、貴重な学びの場をご提供頂きまして、誠にありがとうございました。

下市町役場で同町の概要や取組みについてお話を頂きました。
柿の葉寿司づくりの風景
出来上がった柿の葉寿司。美味しく頂きました。
学生自身でつくった割り箸を使用して柿の葉寿司を頂きました。
大淀町の番茶の調査。生産者の方々からお話をお聞きしました。
大和茶の利き茶を行い、淹れ方や種類による味の違いについて体験しました。

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