食ビの人々

小野 洋 教授 Hiroshi Ono 担当科目:マクロ経済学、資源と環境の経済学、食料生産実習

悩んだら農村へ出よう。
悩んでなくても農村へ出よう

現在の研究内容について、わかりやすく教えてください。

研究課題は大きく二つに分かれます。ひとつめは、生産者への聞き取りや統計をもとに農産物コストを推計することです。農業生産の国際競争力を高める上で、低コスト化が求められています。しかし、コストを正確に計測することは実は簡単ではありません。自家労働が中心の農業では、労働費が明示的ではないためです。
ふたつめは、農業生産が地球温暖化に及ぼす影響の定量的評価です。LCA(ライフサイクルアセスメント)という手法を用いて環境負荷量の計測を行っています。

現在の研究領域に興味を持ったきっかけは何ですか。

教員になる以前の20年間、農林水産省の研究所で研究員をしていました。その当時、作物の収量を増加させる技術を普及するために、生産現場を回っていたのですが、ある生産者から「仮に収量が増えるとしても、そんな作業は割に合わない」とお叱りを受けました。そのとき、我々の考え方に誤りがあるのではないかと思うと同時に、この発言内容を研究面で明らかにしたいと直感しました。

研究のやりがいや面白さを感じるのはどんな時ですか。

年に数回は地方で研究成果の講演をする機会があります。全国各地を訪問すると、様々な考えの人に出会います。とりわけ、異分野の方々との交流は知的好奇心を刺激します。懇親会ではアルコールが入ることもあり、時には激論(口論?)にもなりますが、それはまたそれで勉強になります。

反対に、研究で苦労する点、努力する点はどのようなことですか。

自然科学における実験に相当するのが、社会科学における現地調査です。調査を開始するにあたって、書籍や新聞等から事前に情報を収集するのですが、世間に流れる情報と現場の実態にはしばしば乖離がみられます。良く考えれば当たり前なのですが、我々がマスコミを通じて得る情報は、マスコミに登場してもよいと考える人が提供し、かつ、マスコミ自身が世間に伝えたいと判断したものに限られます。研究を効率的に進めるには、こうした情報の取捨選択が必要となりますが、これにはある種のセンスが求められます。この点、私はまだまだ修行が足りませんね。
また、調査では門前払いを食らうこともめずらしくありません。それでもめげずに通うことが重要です。

これから同じ専門領域を研究する学生に何を期待しますか。

現在の経済学では数学(と統計学)が不可欠です。私自身は一時期かなりの時間をかけて数学を勉強しました。
数学を自分の研究にすぐに役立てる必要はありません。他の人の研究論文を読んで「この人理論がちゃんと分かっていないのに手法だけ使ってやがるな」とほくそ笑むことができれば十分です。例えば、(近代)経済学のベースには鞍点定理がありますが、これを理論的にきちんと理解できたとき、これまでのモヤモヤが一気に解消された気がしました。こういう経験を学生にもしてもらいたいと思います。

食品ビジネス学科を目指す学生へメッセージをお願いします。

「その分野に関する知識では、生物資源科学部の誰にも負けない」というのが卒業研究での目標になります。私の研究室では現地調査かアンケート調査のいずれかを必須としています。教員に頼らず自ら調査のアポを取り、泊まりがけで現地に赴き、聞き取りを1人でこなすというのが理想です(実際こうした学生もいます)。講義のラインナップをみてもわかるように、本学科には卒業研究のネタは豊富に転がっています。安心してください。

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