食ビの人々

大石 敦志 教授 Atsushi Oishi 担当科目:産業組織論、食品経済統計学、食品ビジネスインターンシップ

経済を動かすのは、
消費者の行動である。

現在の研究内容について、わかりやすく教えてください。

食品産業は、生産、流通、販売、消費など、幅広い領域を持っています。その中で、企業がどのように商品を作り、販売しているのか、またそれに対して消費者がどのように行動しているのかを研究するのが、現在の研究テーマです。研究には根拠が必要で、その理論ベースとして「産業組織論」を用いています。研究の最終目的は、消費行動を心理的側面や情報収集の面からも明らかにして、より良い社会を作るために消費者はどう行動すべきかを探究することです。
経済を動かすのは、企業ではなく、最終的には消費者です。この観点から、今よりもっと日本が良くなるために、消費者はどう行動すべきかを探求していきたいと思っています。それが、持続的な日本の豊かさにつながると考えています。

現在の研究領域に興味を持ったきっかけは何ですか。

もともと、大学院では小麦粉製品の産業組織論的研究をしていて、それ以降、様々な食品産業の現場を見せてもらいながら、「食品産業論」をもっと深く研究していきたいと考えるようになりました。「食品産業論」とは、食品企業がどのような経営多角化や製品差別化、原料調達、企業間協調・組織化・系列化、研究開発活動を図っているのか。さらに企業行動や市場条件が製品価格や収益性、技術進歩にいかなる影響を及ぼしているのかを研究するものです。私は「産業組織論」の理論からこれらをみるとどのようになるのだろうと考えたのです。また消費者行動を考えたとき、残念ながら、われわれは短期的な利益や見える範囲だけで行動をしている傾向があります。さらに様々に氾濫する情報のなかで、情報に踊らされることも多くあります。この理由と解決策を考えたいと思うようになりました。

研究の成果をどのように社会に活かしていきたいですか。

私は、消費者が正しい行動をすることで、世の中はもっと良くなると信じています。消費者が優れた商品をちゃんと選択することで、悪貨は淘汰され、信頼に足る企業や商品だけが残っていくことになります。人間の消費行動について研究を深めることで、消費者の正しい行動を実現し、よりよい社会の実現に貢献したいと考えています。私たちの研究成果を広く社会にアピールしていく必要がありますし、日本フードシステム学会の理事など、さまざまな活動にも取り組んでいます。

研究のやりがいや面白さを感じるのはどんな時ですか。

私のゼミでは、学生たちが実際に企業を訪問し、直接、商品開発担当者からその思いなどをヒアリングします。一方、消費者が何を求めているのか、事前にリサーチを行い、企業訪問の結果と合わせ、分析を行います。この時、「行動経済学」の理論を活用することで、現実の世の中が見えてくることがあります。社会が実際にはどう動いているのか数値で明らかになることは、非常に面白いですね。

反対に、研究で苦労する点、努力する点はどのようなことですか。

たとえば一般的に環境に良いとされている運動やムーブメントでも、実は行わないほうがいいこともあります。たとえばエコや健康という耳触りの良さに、つい流されてしまうという行動も見受けられます。その見極めは難しく、正しい行動につなげることも簡単なことではありません。実証的研究は、計算式がたくさんあるなど難しい分野でもあります。それを学生たちに理解してもらうことも苦労する点です。そこでできるだけ現場を見ることと様々な立場の人の声を聞くことにつとめています。

これから同じ専門領域を研究する学生に何を期待しますか。

専門的な学問を身につけることはもちろんですが、学生たちには、自分で考え、行動できる消費者になってほしいというのが、私の希望です。人間は誘惑に弱く、短期的な利益を優先する傾向があります。たとえば、こうした人間の消費行動について研究を深めることで、なぜ、そのような行動をとってしまうのか。行動経済学などの研究を通じて、学生たちには自らのこととして、人間の消費行動についても深く思索をめぐらせてほしいですね。あと情報リテラシーをきちんと身につけて欲しいですね。

食品ビジネス学科を目指す学生へメッセージをお願いします。

教育は与えられるもの、押し付けられるものではありません。自ら能動的に学ぶことが大切です。食品ビジネス学科では、基礎をしっかり身につけることもできますし、様々な実習を通じて現場を知ること、体験することができます。研究には確かな基礎力が必要ですし、それぞれの研究を発展させるためには柔軟な発想力が必要です。食品ビジネス学科にはそれらを発揮できる場所が用意されていますし、全力でサポートしてくれる教員がいます。食品ビジネス学科で、ともに研究できることを楽しみにしています。

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