食ビの人々

下渡 敏治 教授

海外での調査や研究でしか
味わえない醍醐味がある。

現在の研究内容について、わかりやすく教えてください。

大きく2つの研究テーマに取り組んでいて、ひとつは、アジア地域のフードシステムに関する研究です。グローバル化の中で、インドを含めたアジア地域の食料の生産、加工、流通、貿易、消費がどのように変化しているのか。それらの変化は、日本や世界の食料問題や食品企業の活動にどのような影響を与えているのかについて、調べています。
もうひとつの研究テーマは、日本食・日本の食文化の海外への発信、あるいは日本の食材の海外への輸出の研究です。「和食」がユネスコの世界無形文化遺産に登録され、海外でも人気が高まっています。それに伴って、海外で日本食に必要な食材や調味料に対する需要が増えています。海外の消費者にさらに購入してもらうためにはどのような取り組みが必要なのかなど、研究を行っています。

現在の研究領域に興味を持ったきっかけは何ですか。

中学、高校時代から海外に関心があったこと。そしてアジアやアメリカ、ヨーロッパなどに調査に行く機会に恵まれたことが、研究のきっかけになりました。海外の食文化や食料問題に興味を持ったことが、大きかったのではないかと思います。

研究の成果をどのように社会に活かしていきたいですか。

「インドのフードシステム」(2014年)、「グローバル化と食品企業行動」(2014年)、「グローバリゼーションとフードエコノミー(翻訳)」(2012年)などとして、研究成果を出版したり、学会や雑誌に発表しています。日本の食品・農産物の輸出についても、全国各地の地方自治体などの依頼を受け、講演活動を行っています。グローバル・フードバリューチェーン官民推進協議会などの委員として、社会貢献活動にも取り組んでいます。

研究のやりがいや面白さを感じるのはどんな時ですか。

調査のために海外に出かけて、現地でいろいろな人たちに出会って、コミュニケーションできることが、大きな楽しみのひとつになっています。また、苦労して集めた資料や調査結果が、論文や書籍として出版されることは、大きなやりがいです。

反対に、研究で苦労する点、努力する点はどのようなことですか。

大学の授業期間中は研究時間が限られているため、資料を分析したり、原稿を書くことが大変なこともあります。また、海外での調査は治安や言葉、文化や価値観の違いなどさまざまな問題があります。特に発展途上国の場合、飛行機や鉄道なども時間通りに来ないことが当たり前で、約束した時間も守られないのが普通です。農村や地方に行った時は宿泊施設や食べ物、トイレに困ることもしばしばです。こうした問題を乗り越えるためには「野生にかえる」「自分の中にある野性を呼び覚ます」しか方法はありませんね。

これから同じ専門領域を研究する学生に何を期待しますか。

海外のフードシステムには研究すべき課題、テーマが数多くあります。しかし、それに比べ、研究者の数が少ないのが現状です。若いうちにはどんどん海外へ出かけて、いろいろなことに挑戦してほしいと思います。実際に現地にいかなければ判らないことがたくさんあります。現地の調査でしか得られない貴重な情報、新しい発見もたくさんあります。苦労もありますが、この分野の研究には、海外での調査や研究でしか味わえない醍醐味があるのです。

食品ビジネス学科を目指す学生へメッセージをお願いします。

食品ビジネス学科は、農場から食卓に至るまで、あるいは食料・食品が人間の胃袋に入るまで、「食」に関するあらゆることを学ぶことができます。広く、さまざまな分野の専門知識を吸収してほしいと思います。必要に応じて、食品ビジネス学科以外の科目を履修することも可能です。4年間は長いようで、あっという間に過ぎ去ります。何か目標を決めて、大学生活を送ってください。学業だけでなく、いろいろなことに挑戦することが、皆さんの将来につながります。大きな夢と一緒に、食品ビジネス学科で学んでください。

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