食ビの人々

横山 秀樹 Hideki Yokoyama 株式会社マーケティングフォースジャパン
1984年度卒業(代表取締役社長)

命と健康のもとである食べ物すべてにかかわる仕事に誇りをもっています。

今までの経歴について教えてください

1981年、現在の食品ビジネス学科に該当する農獣医学部食品経済学科に入学。1985年に卒業し、新卒で食用油などの食品を扱う日清オイリオグループ株式会社が100%出資する現在の会社「株式会社マーケティングフォースジャパン」(当時の社名は日清販売促進株式会社、1999年に現社名に)に入社。大学時代にずっと飲食関係のアルバイトをしていたこともあって、食品関連の会社へ自然と目が向いていたのだと思います。2002年にマーケティング事業部長、2003年に取締役、2005年から代表取締役社長になりました。

会社の主な事業内容を教えてください

私が入社した当時は、親会社である日清オイリオグループの商品の販売促進に特化した会社でしたが、少しずつ事業を拡大してきまして、今では「食の健全化」を目指し、食に関わることはなんでもやる会社になりました。大きな柱は3つ。「生産者」「製造業」「サービス業」で、これら3者と深く関わり、商品が売れる「要因の検証」から得られたデータで販売プランを立案・実行し、正しいものが正しい価格で売れる仕組みを作ります。たとえば、ある会社が新商品のお菓子を発売することになったとします。でも、それをどういうふうに売ったら多くの人に買ってもらえるかわからない。ここで私たちの会社の出番となります。新商品の発表会や試食販売会などを企画し、広くお客さまに知っていただくこと、買ってもらうことを考えます。
また、山梨県北杜市に畑をもち、農業研修も行っています。当社やグループ会社の社員研修はもちろん、さまざまな企業の社員研修などにも利用していただいています。一緒に土をいじっていると、上司と部下の垣根がなくなります。上司のほうが体力がないことが多く、かっこ悪い姿を見せたりしちゃってね。そうすると不思議と人間関係の風通しがよくなります。私はここに価値を感じています。この畑の場合、農作業でできあがった農作物はあくまでもおまけの産物。会社の中では感じることができない体験をすることがここの畑の目的であって、これも農業の醍醐味のひとつだと思っています。

社長としてどんなことをされているのでしょうか?

大きく分けて3つです。1つ目は、今やっている会社のすべての仕事が順調に進むようにすること。会議に出たり、書類を決裁したりすることもそのなかのひとつです。車が故障するように、会社も毎日営業していればあちこちで問題が起きてきます。その問題が起きたとき、まずは応急手当をするのか、じっくり時間をかけて根本から修理していくのかなどの判断をくだすのも社長の仕事。そもそも問題が起きないような対策をたてることも重要です。2つ目は、新しい道筋をつくること。今までにやったことのない仕事をする場合、相手先に「実績はありませんが、ぜひこの仕事をやらせてください」と言えるのは社長しかいないと思っています。その仕事が会社のためになると思えば、どこまでも懇願します。ある程度道筋がついたならば、あとは社員に任せます。3つ目は、毎年入ってくる新入社員が定年を迎えるとき、「この会社に入ってよかった!」と思える会社にすること。私はこれが社長業として一番大切な仕事だと考えています。

仕事をする上でのやりがいや大変なことを教えてください

「食べ物は、命と健康のもと」。これは、北海道のある農業者の言葉です。食は私たち人間が生きていくために絶対に必要なもの。その重要な食のあらゆることに関わっていることを誇りに思います。大変なことは細かいことを挙げればキリがないくらいですが、それは仕事をやっていれば当然起きうること。それをどう対処していくかを私は楽しんでしまうタイプだと思います。

食品ビジネス学科(旧:食品経済学科)をめざした理由を教えてください

日本大学の付属高校に通っていましたので、日大へ進学するつもりでした。学部学科を選ぶときに「食品経済学科」に目がとまりました。食品に特化した経済って珍しいと思ったんですね。どうせ勉強するなら他と違うことのほうがいいと思ったのがひとつ。それと、小さい頃からずっとボーイスカウトをやっていて、キャンプなどで調理することも多かったので「食」が身近にあったことも関係していると思います。

大学時代に学んだ思い出にはどんなことがありますか?

2年次から「会計学」というゼミに入りました。担当教授は農業経済の先生だったと思います。農村に取材に行ったりしている人がいれば、異常気象について研究している人もいたりして、各々が興味のあることをやっていておもしろいゼミでした。私はずっとファミリーレストランでアルバイトをしていたことから「外食産業が広がっていくと、町の蕎麦屋や寿司屋はなくなるのではないか」というテーマを研究していました。と言ったものの、実は真面目な学生ではなかったのですが(苦笑)。 大学は大人扱いをしてくれるところだったという印象があります。なんでも面倒をみてくれるというわけではなくて……もちろんいい意味で、自分で決断する力をつけたくれたように思います。

今後の展望について教えてください

これからの社会は、人口減少と高齢化という、世界中だれも経験したことがない時代に突入します。そのとき日本は、課題解決先進国となるべきだと思います。そのなかでわが社が目指すのは、食品に関する課題解決です。一次産業の高齢化と後継者不足、添加物の商品、産地偽装や日付改ざんなどの事件……など健全とはとてもいえないこれらの問題を解決し、日本の食のすばらしさを守り、発展させなければいけないと考えています。
社長として、今、社員が働き方を選択できるように改革しているところです。年功序列給を廃止し、10あった部署を今は2つに減らしました。ゆくゆくは0の部署レスを目指しています。「この仕事をやりたい」というリーダーが出てくれば、そこにその仕事をやりたい人が集まってやればいいと思っています。社員の目指す頂上さえ同じならば、そこへの登り方は自由。そのためには社員全員の価値観の統一が必要になります。……と、さらっと話しましたが、こういうことは日本の企業ではやっていないことなので、次々と問題があふれてきています(苦笑)。この改革をやりとげることが私の責務と感じています。

最後に、学生の皆さんにメッセージをお願いします

成績がいいことはもちろん大切ですが、それよりも頭のいい人になってもらいたいですね。大学入試までの受験勉強は、ひとつの答え「絶対解」がありますが、生き方やキャリアには、一人ひとりの幸せや価値観が違うため「絶対解」はなく、自分自身で考えて納得して選ぶ「納得解」しかありません。この納得解をきちんと出せるのが頭のいい人なのだと私は思います。そのために必要なものは何かと考えたとき、それは「好奇心」に尽きるのではないかと思っています。たくさん友達をつくること、言葉の通じない国に行ってみること、彼氏や彼女をつくってデートすること……など、いろいろなことに興味をもち、体験を重ねることで、納得解を導き出すための引き出しが増えていくのではないでしょうか。

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