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2012年度 フィールドリサーチ

高橋ゼミ
2012年9月2日~9月5日 山口県上関町

 2011年3月11日、東日本大震災に起因する原発大事故が発生して以来、私たちは人類にとって経験のない大事故の収拾と、「食」を含む生活圏における大規模な放射能汚染の解決という、重い課題を背負うこととなりました。そして3.11以降、これまでのような危険な原発を地方に押しつけるエネルギー政策や、巨額の補助金と大規模開発に頼った地域経済の問題が一層浮き彫りになり、「農林漁業・「食」を再生するとともに、エネルギー自給により自立的な地域を創るべき」という声も大きくなってきました。

 こうした中、私たち高橋班は、昨年度に引き続き、9月2日(日)~5日(火)の3泊4日で、学生18名(うち2年生16名)と教員1名により、山口県上関町祝島においてフィールドリサーチを行いました。
 祝島は、瀬戸内海に浮かぶ周囲約12kmの小さい離島で、瀬戸内のすばらしい自然環境の中、一本釣りや遊漁を中心とする漁業と、無農薬栽培のビワ生産など、島の人たちは農漁業を中心に生活を営んでいます。一方で、島の対岸約4kmの地点に中国電力上関原発の建設が予定され、一部で埋立工事が始まっていました。しかし祝島では、住民の約9割が原発建設に約30年間反対を続けており、原発に関連した助成金の受取りや漁業権放棄などを拒否しています。上関原発の危険性を懸念する多くの地域住民の声の中でも、国と中国電力は、上関原発建設計画の撤廃を明確にせず、建設計画は続行されています。こうした中、島では原発建設に反対するだけでなく、「原発に頼らない脱原発の地域づくり」を目指し、Uターン・Iターン者を交え、農漁業を中心に据えながら資源リサイクルやエネルギー自給などの取組みを展開しています。

 山口県柳井港から船に揺られて約1時間。現地に到着した初日と2日目の午後は、木村町内会長や橋部上関町教育委員長、農作業体験でお世話になる氏本氏、山戸貞夫元漁協組合長や、ビワ・海産物の産直事業に取り組む山戸孝氏による地域概況と地域おこしの現状、原発反対運動の経過、特に「原発に頼らない地域づくり」の取組み等に関する講義を受けるなど、しっかりと現地ヒアリング調査を行いました。
 そして昼は、両日とも2班に分かれて農業体験/海の体験をしました。
 農業体験では、昨年に引き続き、Uターン者で地域おこしに取り組む氏本長一さんの「放牧養豚」のお手伝いをしました。これは、耕作放棄地に豚を放牧し、草木を食べて貰って農地復元を行うとともに、島内の生ゴミや農業残渣を回収して豚に飼料として給与し、資源の循環を行うという農法です。豚の放牧は全国でも珍しく、野を走り回る豚の姿に、学生の皆さんは最初戸惑いながらも大喜びでした。豚のご馳走である生ゴミの回収から豚への給与なども体験した後、豚が復元した畑でのイモ植え付けなどを行い、土にまみれ爽やかな汗を流しました。
 海の体験では、漁船に乗船して島を一周しながら漁業や島の自然のことを学び、船上で釣りを体験して素晴らしい大漁となったり、海に入って泳ぎ、さらに磯で漁獲などを体験しました。祝島の手つかずの大自然と、農漁業の素晴らしさを目一杯体験すると同時に、このすばらしい環境に予定される原発立地について、その問題の大きさを改めて実感しました。

 今年度の実習の最大の特徴は、初日の夕食以外、食材と燃料を全て現地調達し、調理も自らの手で行うという「自給自足」に取り組んだことです。
 お金を出せば何でも買えるいつもの私たちの食生活。そうしたあり方を見直し、「本当の食」を体験するため、私たちが現地で行ったのは・・・たとえば、農家の人たちの懐に飛び込み農作業を手伝って野菜をもらうこと。また、漁師さんとの交流の中から魚を分けてもらったり、釣りをして夕食のおかずとなる魚を得ること。そして、燃料は全て薪を使用し、その薪も農作業の時に自ら拾ってきたものを使うといった徹底ぶりでした。燃料に始まり、多くの食材を自分たちだけで調達して、食材のほとんど全てを島内産で賄うことによって、3日間のフードマイレージはほぼゼロという文字どおり「地産地消」の実践になりました。
 もちろん、調理は班分けをして学生全員で行いました。まずは火をおこして薪に火をつける。島でとれた干しエビでダシをとって島の野菜で味噌汁をつくる。魚を3枚におろし、刺身・焼き魚・ムニエルをつくる。ご飯は薪を燃やし釜で炊く。もちろん調味料も含めて添加物ゼロ、文字どおりの自然食の食卓でした。
 正直、最初はどこまでできるかどうか、実習の学生はもとよりスタッフも不安でしたが、みんなのがんばりと島の人たちの暖かい支援で、各種野菜料理、豆腐料理、刺身・焼き魚にムニエルなど豊富な海産物のメニュー、天ぷら、さらに餃子まで、予想以上の美味しいおかずをつくることができたのです。

 最終日は、お世話になった現地関係者を交えて、自ら釣った新鮮な魚や氏本農園の健康で美味しい豚肉、農作業を手伝って得た多くの野菜などを使った料理を堪能しながら盛大な報告会を開催、この実習の意義を全員で確認しました。そして4日目、午前中までに全員が調査票の整理を行い、昼過ぎの船で離島、無事に全日程を終えました。
 311という歴史の転換点にあって、「食」と農のあり方、エネルギー自給の大切さ、原発のような危険・巨大で外発的な施設に頼らない地域経済の自立性等々・・・私たちがこの島で学ぶことの意義は極めて大きかったと思います。今年も好天にも恵まれ、全員の協力で有意義な実習とすることができました。

  • 初日の夜、早速、町・島の関係者からヒアリングを行う。
    みんな真剣!
  • 農作業/豚のご馳走、島内の生ゴミ回収。
    これも大切な農作業。
  • 農作業/氏本農園の放牧養豚の豚は実に優しい表情をしている。
  • 農作業/愛嬌を振りまく豚にびっくり!
  • 農作業/ジャガイモの植え付け作業。
  • 農作業/氏本さんと放牧豚を囲んで。
  • 海の体験/漁船に乗って島を一周。潮風で気分は最高!
  • 海の体験/初めての釣り。でも漁師さんの指導で大漁!
    今晩の食材をゲット!
  • ほぼ全食を自給自足!/調理は薪の火つけから始まります。
  • ほぼ全食を自給自足!/みんなで分担して調理。
  • ほぼ全食を自給自足!/魚も3枚におろせるようになりました!
  • ほぼ全食を自給自足!/食事の前には各班の調理担当者が調理と食材を報告。充実感で笑顔がこぼれます。
  • ほぼ全食を自給自足!/全て島の食材だけで自分たちでつくった食事。美味しい!最高!
  • バックは素晴らしい大自然、しかし原発予定地が間近に見える。この素晴しい自然を守りたい。

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