微生物共生系に基づく新しい資源利用開発 日本大学21世紀COEプログラム
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プロジェクトの概要
拠点形成の目的・必要性
 生物が種を越えて協力しあう共生現象の解明は、自然環境における生物の行動を理解し利用する上で不可欠となってきている。特に、21世紀においてヒトの産業活動を地球環境と調和させる新たな道を見出す上で、生物が環境と調和するための主要戦略として"共生"の積極的利用が不可欠であり、そのための基礎研究が緊急に必要とされる。本拠点は、微生物共生系をKey wordとして微生物−微生物、植物−微生物、動物−微生物間の相互作用を分子生態学、生化学、分子生物学等の解析手法を用いた幅広い視点から把握することを特色とし、微生物を新しい生物資源としての利用を目指す研究教育を行う。また、生命科学研究所を基幹とし、応用生命科学、生物資源生産科学、生物資源利用科学の3専攻を横断的かつ学際的に連携させ、自然環境における共生現象を実験的に解明し、これまで未利用であった生物資源としての利用を目指す新しい学問分野を構築する。


 近年、国際的にも微生物コンソーシアムに関する研究が始まった。本学部においては平成10年にハイテクリサーチセンターとして設立された生命科学研究所を中心にプロジェクト「分子生態学的手法にもとづく生物生産と環境修復に関する基礎研究」が始まり、共生微生物の基礎および利用について極めて先導的な研究が進められてきている。これは、拠点リーダー等によって世界で始めて発見された好熱性共生細菌を中心とする極めて先導的、独創的な研究であり、近い将来、得られた多くの学問的知見が生物生産や環境修復等に応用されるものと期待されている。
研究拠点形成実施計画
新しい微生物間共生システムの環境における機能の解析と利用
 絶対共生細菌とその生育支持菌の間では、支持菌が相手の生育支持に係わるホルモン様物質を生産していることを発見した。また、異種放線菌の間では生育促進や生育阻害を誘導する物質が介在し、他方の放線菌の生育を制御する現象を見出した。これら共生微生物および放線菌間で働いている物質を単離・精製して構造決定を行う。また、その作用機構を解明して微生物の生育制御等への利用を図る。さらに、新しい海洋性石油資化微生物の種間相互作用を解明し、効率的な環境修復への利用を図る。また、廃水処理槽内の複合微生物相を解析し人為的な制御を図る。
植物−微生物相後作用の解析と利用 
 マメ科植物であるミヤコグサと菌根菌と相互作用について、どのような物質が介在しているのか分子生物学的に研究する。また、新しい根粒菌を探索し、その作物生産に及ぼす影響について研究する。
動物−微生物間相互作用の解析と利用 
 昆虫の腸管にはセルロース資化性共生細菌が生息していることが知られている。そこで、特にカブト虫幼虫を対象としてその共生菌の分子生態学的解析を行う。
微生物複合汚染の生物学的制御
 食品の保存中に、酢酸菌と乳酸菌が共存すると、多量のバイオフィルムを形成し食品劣化の原因となっている。そこでこの形成機構を解明し、生物学的な形成制御を図る。
有用遺伝子資源としての微生物 
  共生系微生物を含めた幅広い微生物を対象に、微生物の生産する糖質変換酵素を探索し利用を図る。
教育実施計画
 本拠点では、微生物共生系をKey wordとして微生物−微生物、植物−微生物、動物−微生物間の相互作用を分子生態学、生化学、分子生物学等の解析手法を用いて解析し、有用機能を持った微生物を新しい生物資源としての利用を目指した研究教育を行う。研究の性質上、研究室での実験が主体となるため、従来の生態学に見受けられたような受動的にならないよう、研究の現状や問題点の整理等を通して客観的に自分の研究をとらえられるよう研究指導する。また、研究によって得られた成果は、積極的に口頭発表し、論文にまとめるよう指導する。さらに、現在の学問・研究は国際的なレベルで展開していることを考慮し、海外の研究者とコミュニケーションが容易にできる大学院生を養成する。そのためには、本推進事業で計画している国際シンポジウムへの積極的な参加を指導する。

 
  さらに、学位取得後は基礎研究と応用研究の双方の研究に携わり得る次世代を担う若手研究者として、積極的に海外に活動の場を求める人材を育成し、国際社会に対して人的貢献を図る。
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