微生物共生系に基づく新しい資源利用開発 日本大学21世紀COEプログラム
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拠点リーダー
別府 輝彦
◎日本大学生物資源科学部生命科学研究所所長
◎日本大学生物資源科学部教授

21世紀COEプログラム「環境適応生物を活用する環境修復技術の開発」
 さまざまな生物が種を越えて協力しあう共生現象の解明は、自然環境における生物の行動を理解する上で不可欠であり、また人類の産業活動を地球環境と調和させる新たな道を見出す必要に迫られている今日では、生物が共生を通じて発現している機能を積極的に利用する必要性が高くなって来ています。我々は、多様な共生現象を特に微生物を中心に捉え直すことによって、この問題に新しい角度から迫ることを目的として本プログラムに取り組みました。


 地球上のあらゆる環境に普遍的に分布している微生物の活動は、これまでも惑星としての地球全体に影響を及ぼすほど大きいと考えられていましたが、近年の分子生態学的手法の発達によって、固体培地を用いる従来の微生物学的手法で純粋分離できる微生物は実在する微生物のたかだか1%程度に過ぎないことが明らかにされました。このような事実が示す巨大な種の多様性とバイオマスを持つ微生物は、動物、植物、微生物にわたる地球上の生命を共生関係を通じて支えていると考えることが出来ますが、その多くはなお未解明のまま残されています。その中でも特に種の異なる微生物同士の共生は、自然界における基本的な微生物生態である複合微生物群集などで鍵となる役割を果たしているにもかかわらず、これまで解析手段が乏しいためにほとんど研究がなされてきませんでした。


 本プログラムにおいては、独自に発見した共生細菌をモデル生物として新しい培養手法やゲノム解析などの手法を駆使して解析することによって、微生物間共生に普遍的に働いている物質的相互作用を基礎的に解明するとともに、海洋における石油分解菌などを利用するバイオレメディエーション、食品の微生物汚染等に関わるバイオフィルム形成、共生微生物の新しい遺伝子資源としての利用可能性など、微生物間共生の応用に関わる種々の課題について基礎及び実用的成果を上げることを目指しています。さらに、高等動植物を宿主とする微生物共生系についても生物生産や資源利用の観点から取り上げ、特にマメ科植物と根粒菌との共生については、モデル植物としてミヤコグサを用いてこれまで十分解明されていない植物側の遺伝的背景を解明し、植物育種にも応用しうる基礎的知見を得ることを目指しています。


 21世紀の緊急の課題となっている環境保全、食糧、エネルギー、さらには感染症などにいたるさまざまな課題は、「地球が微生物と共生している」新しい世界の姿を正しく理解することを抜きにして語ることはできません。そのような思いで取り組んでいる我々の挑戦に、ご理解とご支援を賜れば幸いです。
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