2. 主要雑草の種類と分布
 1)世界における強害雑草 Geographical Atlas of the World Weeds(Holm,1979)によれば,農業における雑草は8,000種以上あるが,重要な雑草は250種とされている。
 表U-5は世界の強害雑草の種類・分布と日本における分布を比較したものである。



図U-2はシロザ,イヌビエ,スギナ,ハマスゲの世界における分布を示したものである。図中のラインは分布の境界,数字は温度指数(月平均気温
から-5℃したものの12月の合計温度)を表している。




2)日本における強害雑草
 水田の強害雑草30種,畑地のそれは63種,田畑共通は4種。害草は水田73種,畑地139種,畦畔雑草は水田88種,畑地100種(笠原,1976)。

水田における強害雑草雑草は,タイヌビエであり,畑地ではメヒシバである。日本におけるヒエは表U-8のとおりである。

土地利用による種類の変化は表U-9に示すとおりである。下線は主要な雑草を示す。



4)時代による種類と変化

 主要雑草は,雑草防除技術,栽培技術によって雑草は変化する。よく知られているのは水田雑草における問題雑草である。
2.4−D普及前(1950年以前):中耕(物理的手法;田おし車)と手取り除草では,ノビエやコナギをはじめとした一年生雑草,一部多年生のマツバイが見られる程度である。2,4Dの普及(1951-1970):2,4-Dは,広葉の雑草には効果が大きいがイネ科には効果が小さい。そのため,ノビエが強害雑草となった。

PCP,CNP(1970-1980年代):ノビエに効果のあるこれらの除草剤が開発され,ノビエ,広葉雑草が減少し,再びマツバイが問題化した。1975年以降にベンチオカーブ・シメトリンが開発され,一年生雑草,マツバイに卓越した効果をあげ,これに変わりウリカワ,ミズガヤツリ,ホタルイなどの多年生雑草が目立つようになってきた。

現在は微量で効果を発生するスルホニルウレア系(広葉に効果が高い)とイネ科,多年生雑草に効果のある化合物が開発されてきた。しかし,スルホニルウレア系に対する抵抗性雑草(アゼナ,ホタルイ類,コナギなど)が問題になっている。

多年生雑草が問題化したのは,除草剤だけでなく,二毛作(稲作・麦作)を行わなくなったことにより,耕起の回数が少なくなったり,プラウ耕を省略しロータリ耕になったことも影響していると思われる。技術の発達と社会的情勢の変化によっても雑草の発生する種類は変化してくる。

5)種類の地域性