レポートの書き方
大学の授業においてレポートの提出が求められることは多い。大半の学生はレポートをどのように書いたらよいかと悩んでいるようです。レポートは一つの事柄(課題を指定されることが多い)について,その情報を集め,分析した結果をあるがままにまとめて他人にわかりやすく報告するものです。大学の低学年では正面切ってレポートの書き方を教授していません。その意味では,・・・・についてレポートを提出しなさい。というのは学生にとって不親切かも知れません。
これまでは学術雑誌などの論文を,または,これらに関する成書を参考にしながら,学生の自助努力でレポート(論文)を書いてきました。が,そのような手法はもはや通じないようです。ここでは,学生が自分にも相手にも「わかりやすいレポート」を書くにはどうしたらよい?以下にその概要をマニュアル化してみました。このマニュアルの延長線上に,例えば社会にでた場合の「業務報告書,企画書,出張報告書等」が,また学究生活に入る場合の「論文」があるということを意識して下さい。
この「レポートの書き方」は,画面で読むことを前提にして作成していません。従って,インターネットツールバー上に「ワード:」や一太郎を示すロゴマークがあります。これをクリックすると,ワープロソフト上に読み込まれますから、そこで読みやすいように一行の字数・一ページあたりの行数,フォント等の書式を設定,各自編集・印刷下さい。
                                  02.5.9 環境生態学研究室 浅野 紘臣

このマニュアルは学生のレポートを参考に,レポートのまとめ方を記載しました。よく理解し,後に自分で読み返しても納得いくようなレポートを作成下さい。
1.レポートを書くにあたって(基礎的なこと)
1)指定された課題に対し,自分の興味ある「キーワード」をイメージし,そのイメージにあった参考文献(雑誌・書物新聞記事など)をインターネットから検索します。効率は悪いけど図書館(地域の図書館も利用する)でも探せます。文献探しは5)に詳細を記述しました。
2)タイトルを決めます。タイトルは大変重要です。いわばレポートの「顔」です。「他人が読んでみよう」と思わせるものにしてください(顔を自分で創れるのだからデザインを美しく!レポートの内容を的確に表すものにしよう)。わかりやすい,中身が想像できる,他人が刺激(興味)をうけるタイトルに。
3)提出用紙はA-4版とし,原則として本文3−5ページとします(私の場合)。
4)表紙はバランスを考えてタイトル・学生番号(所属)・氏名を記載します。参考に示すと以下の通りです。

      ○○○学(提出する科目の名称をいれます)

タイトル: 魚類の危機(この文字はサブタイトルよりやや大きくします)
サブタイトル(必要なら):−絶滅する魚類とそれを加速させる環境−
学生番号: ○○-○○○○
氏  名: 山田顕義(←日本大学創始者)
以上の項目は,センターに揃える。
5)まず,参考文献を探します。その手口はインターネットが一般的で,作業効率が雑誌に直接当たるのに比べてはるかに高い。図書館の書架から雑誌を引っ張り出すのでは,のろくて非効率です。関連のサーチエンジン(和・英検索専門エンジン,学会のHPからの検索,学術情報センターからの検索,一般的なインターネット検索等)にキーワードを入れる。キーワードは複数を用いて検索する。例えば,魚の絶滅危惧種に関するレポートにするとしよう。この場合,「絶滅危惧種」で検索し,次に「魚」,「河川」などと絞り込んでいくとよい。興味ある文献がヒットしたなら,図書館等で入手し精読する。
次にレポートをどのような構成にするか箇条書きにしてみます(図表がある文献では,解説の文字面を読むのではなく図表から何がいえるのか,何がいえないのかを書き出し「図表を読む」ようにすれば自分の文章でレポートが書けるようになるし,このことは大変重要で近い将来諸君にとって必ず有益になるでしょう)。次に自分のメモに従って思考しながら参考にした文献の中身ををまとめよう。この際適当な小見出し(小タイトル:内容を端的に表すタイトルとする)をつけて,その小見出しごとにまとめるようにするとメリハリの利いた文章となります。文章は,情緒的であってはいけません。事実を淡々と述べよう。
6)考察では調査(実験)した事実の個々について解釈し,その解釈に至る要因を論じる。結論を導く。その際,独りよがりな結論にならないように,適切な文献を引用することも大切です。こうして自分自身の考えを論理整然と展開すれば,学生らしい文章(成長と共に文章は変化します)として,雑誌やインターネットなどの「カット&ペースト」(かどうか読めばわかります)より,はるかに高い評価を得ることとなりましょう(私の場合)。
7) レポートは一度下書きし,読み直して全体として起承転結な構成になっているか,誤字,脱字はないかなど,入念に点検しよう。友達や兄弟に読んで聞かせて理解できるか確かめるのも自身の文章力を高める一つの方法でしょう。ここはレポート作成上の一つの山です。
8)次に鉛筆(正式には不可,私の場合はOK)またはボールペンを用いて指定された用紙に清書します(読みやすい字:ワープロがよいでしょう←これからは必需品です)。レポートの文体は,「である」調で書きます。場合によっては「です,ます」調の方がいい場合もあります。いずれにしても統一した文体が好ましい。ワープロを利用するとメリットが多いですよ。例えば,書式(レイアウト,フォント,文字装飾等)の統一,送りがなの間違いや誤字がない(誤植は多くなるから注意が必要),スペルチェク,文字の検索・置換が自在にできる,文体の統一等々の機能が有効に使えます。
9)その際,図表の切り張り付けはいけません。図は下に,表は上にそれぞれの内容を表すタイトルを簡素に表記します例:第1図 イワナの地域別分布(この場合タイトルは図の下に表記します),他人のものを引用している場合はその出所を図表の直下に記載します。これは大変重要なことです。記載のない事例を見かけますが著作権の侵害に当たります。例:(岩魚大五郎,2001から)とします。
10)特別のことがない限り,タイトルや小見出しにはカラーを使用しません。
11)レポートが完成したら左片隅をステープルで1箇所綴じます(私の場合たくさんの提出物を読むための便宜上の処置です。一般には2箇所くらい綴じます)。
12)レポートのレイアウト(一部重複)は,ある意味で大切です。どんなに優れたレポートもレイアウトが悪かったり,字が汚かったりすると,読む側の意欲を削ぎます。相手の立場に立ってレポートを書き上げることを奨めます。馬子にも衣装というでしょう?。
13)評価(一部重複)レイアウトが良くて,読む側がわくわくするようなタイトルがいいですね。基本的にはレポートの中身勝負です。釣りの魚に例えれば,疑似餌よりも生き餌を好むタイプでしょうか。矛盾するようですが,あえて言えば,タイトルが刺激的なものを評価する傾向があります。しかも内容が私の未知の分野ならもっと評価は高いでしょう。
   ワープロの使用を推奨するが、コピーはやめましょう、レポート作成の意味がありません。 
2. 2ページ以降を構成する記載項目(以下は本文構成の例であり,各自アレンジ可能)
レポート構成の順序は,はじめに,材料及び方法(実験論文の場合),結果(実験論文の場合),または調査の項目(レポートでは,「1.イワナの生態」などと直接書き出します),考察,謝辞(文献収集や査読で特別にお世話になった場合に礼を述べる項目です),終わりに,摘要(摘要は「はじめに」の前に来る場合もあります。終わりにはレポートでよく使用します),参考文献(引用文献と表示する場合もあります)の順です。以下にレポートに必要な項目ごとに述べていきます。
1)まえがき,または,「はじめに」という項目を立てます。次にこのレポートを書くに至った経緯や目的,これまでの経過・時代背景:動機やその課題に対する現在の状況などを記載します(まえがき,という項目なしに直接書き始める場合もあります)。
2)次にその調査内容(自分が調べた事柄)を書きます。
T.絶滅の危機にある魚類(若干の背景を書いても良い。続いて絶滅危機に瀕する魚類を挙げていきます。以下は一つの例です。レポートの内容によりそれぞれ異なります)
 1. イワナ(生態的特徴,生息場所,絶滅危機の状態等々を記述。この場合は参考文献に記載してあることを正確に記載します)さらに,小見出しが必要なら,1)…と書きます。以下同様です。
 2. ハリヨ(同上,参考文献はいくつか当たることをお奨めします)
 3. オヤニラミ(必要ならさらに4.とし項目を追加します)
U.絶滅を加速する環境(同2))
 1.森林の質的変化(上記2)1,2に同じ)
 2. 都市化と森林の減少(同上)
 3.進む湖沼,河川の富栄養化(必要ならV…と項目を追加します)
3)考察( 2),3)をふまえて)
上記2),3)に関する事項について参考(引用)文献や自身の意見を整合性のある論議として展開します。各項目2)の1,2…,3)の1,2.3…ごとに考察をしても良いでしょう。文献によるレポートの場合は,考察として新たな項目を立てて論議している例は少ないように思います。2),3)の中で論議したならば当然のことながら「考察」の項目はなくなります。
 この項目(考察)は,2)や3)とならんで,いやそれ以上に大切(これまでの記述の核心部分)です。評価するときはこの項の内容を重要視します。だからといってひたすら饒舌にすることは良くありません。それだけに,この項を書くときには苦心しなければいけません。
5)終わりに
一般の科学論文では「終わりに」の代わりに「摘要」としますが,文献調査によるレポートでは,調査した結果を箇条書きに書いている場合も多く見かけます。明らかになった結果を箇条書きにする前に,前段として200-300字で調査した概要を記載するとスマートなレポートとなります。
6)参考(引用)文献(参考・引用した文献,雑誌,新聞等)
良いレポートを書くためには,関係の参考文献を最低でも数冊は目を通します。全く参考文献がな い場合は,その人の独創的なものであり,相当高い評価を受けるか,全く評価に値しないかどちらかでしょう。自分の文章でない引用文については,…。1)(上付片括弧の数字は文献番号を表す)や「」でくくるなどしてその旨わかるようにしておきます(関係の雑誌を参照下さい)。なお,参考(引用)文献は下に示すように著者,発行年,雑誌名,発行所,場所,ページの順に記載します。以下はその例です。文献はABCあるいはあいうえお順等に記載します。
1. 岩魚第五郎 2001.イワナの生態.岩魚館, 仙台, pp. 55-75.(←単行本の参考・引用例)
2. 親睨陽子 1945. オヤニラミの生態と分布. 大睨和男編集 「渓流魚大辞典」. 渓流ジャーナル社, 東京, pp. 25-35..(←共著単行本の一部の参考・引用例)
3.  針洋子 2002. 毎朝新聞(.5.9 夕刊)(←新聞の参考・引用例)
4. 岩魚大五郎 2000. 日光川におけるニジマスとイワナの分布.サケ・マス研究55, 105-112.(雑誌の参考引用例)
5.  大和武 絶滅危惧種, http://www.・・・(インターネットからの参考・引用例)
7) 参考になるインターネット上の資料
 .http://www2.dokkyo.ac.jp/~msemi008/index2/e_text/index.html    ←レポート作成(文系)について詳細が記載されています。レポートと論文の違い,レポートのレイアウト,情報収集・加工,文書の作成まで多義にわたっています。
通常のレポート提出には大いに参考になります。
インターネットで「レポートの書き方」を検索すると5000以上ヒットします。しかしながらここまでかみ砕いた「レポートの書き方」は,見あたりません。つまりここでは「手取り足取り」の初心者向けの表現がしてあります。
8)番外編
レポートを書くと言うことは,かくも大変なことであるということがわかったであろう?さらに学術論文の場合は,新しい知見が得られていなければどの学会誌でも却下(Reject)されますから,その知見を得るためにどんな実験をどのように計画(方法と材料)し,その結果を吟味し,どうとりまとめる(分析方法・表現等)かに著者は神経を注ぐことになります。実験結果はポジティブ(この場合はよい)ばかりではありません。ネガティブな結果が出た場合は,ほとんどの場合徒労に終わります。故に慎重に実験計画を練る必要があります。
研究者は、功を焦ってはいけません、地道な努力必要です。