日本大学日本大学 生物資源科学部 生命農学科

日本大学 生物資源科学部 生命農学科

小田急江ノ島線六会日大前駅からすぐのキャンパスです。徒歩3分

Correspondence生命農学科通信

Correspondence生命農学科通信

生命農学科の魅力と取組みを発信

生命農学科通信 vol.39「植物医科学と国際植物防疫年」

【植物医科学】

世界の人口は第2次大戦終結直後の1950年にはまだ25億人程度であったものが、50年後の2000年には60億人に達し、100年後の2050年には100億人に迫るものと予想されています。そのような状況の中で、世界の食料生産の30~40%が病害虫・雑草による被害で失われています(図1)。潜在的には、病害虫・雑草害に起因する損失の推定値は全世界で50%にもなるとされています。したがって、病害虫・雑草害を受けないように植物を健康に保つこと(これをPlant Healthといいます)は、食糧難を解消するための戦略の重要な要素なのです。食糧難は、飢餓はもちろんのこと、貧困、環境破壊の温床にもなり、結果として経済発展にブレーキをかける大きな要因となります。したがって、私たち人類が将来にわたって生きて行くための食糧を生産し続けていくためには、品種改良や栽培方法の改良、肥料の安定供給などによって生産力そのものを高めるだけでなく、この病害虫・雑草による減収を最小限の抑えていくための技術開発が求められているのです。

 

【国際植物防疫年(The Year of Plant Health)】

このような状況の中で、国連では人類の食糧生産の脅威となる植物病害虫のまん延を防ぐことの重要性と大切さを広く知ってもらうために、2020年を国際植物防疫年(The Year of Plant Health)に定め、持続可能な開発目標 (SDGs)では「健全な植物は、食料の安定供給、環境保全や生物多様性の向上、経済開発など多くの重要 課題を支える重要な役割をもつ」と位置付けて、国際社会の積極的な取組を促しています(図2)。

近年、植物由来の品目や生産物の貿易の増加と気候変動の影響により、病害虫・雑草のグローバルな移動や新たな地域への侵入リスクが劇的に増加しています。ある地域で植物病害虫が発生すれば、ヒトのウイルス病と同じように瞬く間に世界中に拡散してしまう危険性が常に付きまとっているのです。ですから、専門家だけでなく、一般市民の方々にも「Plant Health」の重要性を理解し、たとえば植物や植物製品(果物、穀類、種子、木材等)をある場所から別の場所へ移動させる際には、一人ひとりが責任ある行動をとってもらうためにも、2020年を国際植物防疫年に定めたのです。今年の9月には、アジア植物病理学会がつくば市で開催されることになっており、そこでも地球規模での病害防除のあり方について国際的な検討が行われることになっています。なお、詳しくは農林水産省のホームページ、https://www.maff.go.jp/j/syouan/syokubo/keneki/iyph/iyph.html、をご参照ください。

 

図1 世界の作物生産における被害要因別構成比(2002年、FAO)

 

図2 国際防疫年2020(農林水産省、FAO)

 

☆生命農学科公式HP
☆生命農学科 公式Instgram
☆生命農学科 公式Twitter

2020年2月20日

生命農学科通信一覧へ戻る