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Correspondence生命農学科通信

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生命農学科通信 vol.29「シクラメンあれこれ」

 

秋から冬の時期になると、お花屋さんで上の写真のような花を見かけますが、皆さんはこの花の名前をご存知ですか?

 

これは、「シクラメン」という花です。

 

シクラメンは、北アフリカから中近東、ヨーロッパの地中海沿岸地域にかけて複数の原種が自生していますが、現在、お花屋さんで売っている園芸品種のほとんどは、シクラメン・ペルシカム(Cyclamen persicum)という原種を品種改良しています。日本には明治時代になってから入ってきました。シクラメンは花の大きさから大輪系、中輪系、小輪系の3タイプに分けられ、花弁の長さが4 cm以下の小輪系は「ミニシクラメン」と呼ばれています。また、寄せ植えや花壇などで楽しめる寒さに強いミニシクラメンの一種は「ガーデンシクラメン」と呼ばれています。

 

ガーデンシクラメン(左)とシクラメン(右)

花や葉の大きさが全然違います。

 

 

近年では、様々なシクラメン品種が作出されており、下の写真のように赤や白、ピンクの他、花弁の基部と先端で花色が異なる覆輪などの模様や花弁の縁にフリルが入るフリンジ咲き、八重咲き、芳香のある品種などバラエティに富んでいます。そして、シクラメンの花色や花器形態に関わる研究も活発に行われています。

 

様々な花色や模様、フリンジ咲きなど

 

一重咲きと八重咲きシクラメン(Mizunoe et al., 2015)

 

 

シクラメンに欠かせない「葉組(はぐ)み」

シクラメンの外観品質を高めるために必要な作業として、「葉組み」があります。9~10月頃から数回行う葉組みは、球根上の芽点に日光が当たるようにするため葉を整理する作業です。この作業を行うことで、新葉や蕾の成長を促進し、結果として花数や葉数を増やす効果があります。

 

葉組み前

中心部が葉で覆われています。

株の中心にある葉を外側の葉の下へ持って行き、葉を下ろしていきます。

 

葉組み後

中心部分が光に当たるようになりました!

 

 

葉組みを手軽に行うため、葉組みリングを使ったりもします。

 

 

 

シクラメンの花をより長く楽しむために

シクラメンの花期は一般的に10月~翌3月までですが、皆さんが買ったシクラメンの花を自宅で綺麗に長く楽しむためのポイントを紹介します。

・萎れた花(花梗も含む)や黄色くなった葉(葉柄も含む)をこまめに摘み取る。

→病気の発生を防ぎます。

 

・水遣りをする時、花や葉、球根に水がかからないようにする。

→花や葉などが濡れたままだと湿度が高い状態になり、灰色かび病など病気が発生しやすくなります。

→鉢土の表面が乾いてきたら、鉢底から水が出るほどたっぷりと水をやります。

 

・室内に置く際、できるだけ日当たりの良い場所を選ぶ。

→日光を好む植物なので、日当たりが悪いと花数が減り,葉が黄色く変色します(花梗の徒長も日光不足により発生します)。

→窓際に置いた時、冬場の夜間は寒いので窓から離して暖かいところへ。

 

・肥料を時々与える。

→購入直後は培養土中の肥料があるので大丈夫ですが、葉の色が薄くなってきたり、花が小さくなってきた場合は追肥が必要となります。3要素(N、P2O5、K2O)が等量の錠剤肥料を1~2か月に1回置き肥します。液体肥料の場合は、K2O分の多い液肥(1000倍希釈)を1週間に1回鉢土にしっかり与えます。

 

・温度管理も意識する(暖房機の温風が直接当たる場所はダメ)。

→シクラメン(ガーデンシクラメンも含む)の生育適温15℃~20℃位です。大・中輪系シクラメンは室内で観賞し、夜間は10℃程度、日中は25℃を越えないようにします(意外と冬場に室内の高温で痛むことがある)。また、冬場の暖かい日中(10℃以上)は、時々、屋外の日だまりへ出して日光浴させ、日が沈む(寒くなる)前に室内へ戻すと、株が締まり花つきも良くなります。

→ガーデンシクラメンは5℃程度まで気温が下がっても問題ありませんが、霜が降りたりするとダメージを受けます。そのため、地植えの場合は霜よけ(不織布を被せる、ビニールで覆う、藁を敷くなど)が必要で、プランター植えの場合、冷え込む日は玄関などの室内へ取り込みます。

 

 

シクラメンの花や葉の各部位の名前

 

生命農学科では、2年生の生命農学実習で生産農家視点によるシクラメンの栽培方法を学んでいます。また、花の科学研究室の窪田教授が開発したICT対応型根域環境制御装置(N.RECS)を用いて、植物の根域温度を調節することで、シクラメンをはじめとする鉢物花きの生育や開花を促進することが明らかになりました。今後、この根域温度調節技術を用いることで、より効率的に高品質の花き生産が可能になっていくと期待されています。

 

根域環境制御装置(N.RECS)によるシクラメンの栽培試験研究の様子

 

【参考文献】

・岩瀬 徹,大野啓一.野外観察ハンドブック 写真で見る植物用語.全国農村教育協会.東京.

・樋口春三.2009.農学基礎セミナー 新版 草花栽培の基礎.p. 118-127.農山漁村文化協会.東京.

・Mizunoe Y., S. Kubota, A. Kanno and Y. Ozaki. 2015. Morphological Variation and AGAMOUS-like Gene Expression in Double Flowers of Cyclamen persicum Mill. The Horticulture Journal 84: 140-147.

・吉田健一.2013.NHK趣味の園芸 よくわかる栽培12か月.シクラメン、ガーデンシクラメン.NHK出版.東京.

 

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2019年11月19日

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