骨の博物館

■新着情報

2024/3/27
★イワツバメの初認

この時期、毎年ソメイヨシノの開花予想がされます。
季節性のある事象をその年に初めて確認することを
初認とよびます。

本日3/27、引地川でイワツバメを今年初めて
確認しました。
イワツバメは、冬期に東南アジアで越冬し、
夏期に日本周辺に飛来して繁殖する渡り鳥(夏鳥)です。
同様に自分の記録では、トビ稲村ヶ崎で巣材運び2/8、
ハシボソガラス4号館北側のケヤキ上の古巣に入る3/14、
コチドリ横須賀市佐島で初認3/23などがありました。

私は例年3/18頃にツバメを見ますが、
今年はまだ見ておりません。

みなさんも是非探してみて下さい。
そして記録を残しましょう。

博物館のツバメ(イワツバメの標本はありません)
ツバメ標本


2024/3/13
★風に頼るオオバヤシャブシ

海岸近くの路上に巨大なイモムシの様な花穂が
落ちていたので、見上げるとオオバヤシャブシでした。

脱落したオオバヤシャブシ雄花穂
雄花穂

花をつけたオオバヤシャブシの枝
枝

オオバヤシャブシは、福島県から紀伊半島にかけての
沿海地に多いカバノキ科の植物(日本固有種)です。

一つの枝に雄花の穂と雌花の穂をつけます。
これらは小さな花の集合体です。
スギ等の針葉樹と同様に、風で花粉を
飛ばして受粉させる風媒花です。

風媒花は、一般に虫や鳥等を引きつけるような
装飾がないため、小さく地味な形態をしています。

オオバヤシャブシの雄花穂(大)と雌花穂(小)
雄花穂(大)と雌花穂(小)

雄花穂(ゆうかすい)アップ
雄花穂

雌花穂(しかすい)アップ
雌花穂

枝をよく見ると、去年の雌花に由来する果穂がついています。
これを軽くたたくと中から、翼のついた果実がでてきました。
この果実も風で散布されます。

果穂(かすい)
果穂

翼(よく)のついた果実
果実

学内ではオオバヤシャブシを見ていませんが、
同じカバノキ科で風媒花のイヌシデやアカシデが生育します。
これらの花はまだこれからの様です。

イヌシデは博物館裏、アカシデは図書館前にありますので、
是非観察しましょう。


2024/3/6
★カエルの産卵

二十四節気の啓蟄は、虫などが活動を
始める時期とされますが、
アカガエルの仲間やヒキガエルの仲間などは、
それよりも前に活動を開始します。
ヘビなどの外敵の少ない時期に産卵します。

彼らは普段、森や林などの陸上で生活をしていますが、
産卵時だけ水田や水たまりなどの水場に集まります。

今年大学構内では、アズマヒキガエルが産卵をしました。
場所は秘密です。

学内のアズマヒキガエル(2014年博物館前)
アズマヒキガエル

アズマヒキガエルのひも状の卵塊(千葉県)
卵塊

博物館のアズマヒキガエル標本
アズマヒキガエル

葉山町の谷戸の水田では、
ヤマアカガエルが産卵を始めました。

ヤマアカガエル
ヤマアカガエル



博物館のヤマアカガエル標本
ヤマアカガエル

藤沢の谷戸では、アカガエルの声を確認しました。

産卵場の水田に来たニホンアカガエル(2011年藤沢市内)
ニホンアカガエル

博物館のニホンアカガエル標本
ニホンアカガエル

彼らの観察は、春一番のような
強い南風を伴う雨天時が向いています。
産卵後、彼らはもう一度冬眠します。


2024/2/28
★ウミウの白ポケット

1月下旬頃からちらほら、一部のウミウの成鳥に
一時期だけの羽毛がみられはじめます。

ウミウの肢の基部に大きなポケットの様な
白い長方形の斑を形成する羽毛、頭頂部から
首にかけて白く細長い白髪の様な羽毛です。

これらは、生殖羽ともよばれる繁殖活動にかかわる羽毛です。
しかし、北国の繁殖地での子育てをする時期には、
すっかり無くなっているため、つがいを形成する時期に
使われる羽毛だと考えられます。

またこの時期に、眼の下や口の後ろ、人の顔で頬に
相当する付近が、白地にそばかすの様な柄や、
逆に黒ずんだ様な柄になります。

また、嘴に縞の様な模様が目立ち、嘴基部の
裸出した皮膚が黄色から橙色に変化します。

白地にそばかすの個体
白地にそばかすの個体

顔全体が黒ずむ個体
顔全体が黒ずむ個体

野外での観察では、この部位の羽毛がどうなっているか
わかりませんが、博物館の標本ならば詳しく観察できます。

博物館には、成鳥の剥製で黒ずむ個体がありますので観察をしてみました。
白髪の様な羽毛を拡大すると、糸状ではなく、
一本の軸(羽軸)と枝分かれ(羽枝)がみられます。

ポケットの様な羽毛は、大きくフワフワとした羽毛で、
黒い羽毛の間から出ていて、黒の地の部分を覆っています。
これらは、この部分が生え変わるのではなく、
もとの羽毛を後から生えた白い羽毛が覆っています。

ウミウの後頭部から首付近の白い羽毛
白い羽毛

ウミウ大腿部付近の白い斑
白い斑

次に顔の黒ずむ個体の顔の部分ですが、
白い羽毛の先端部分が黒くなっています。
これらの羽毛が生え替わったものか、
後から加わったものなのかは、わかりません。

ウミウの顔が黒ずんだ個体の顔の羽毛
顔の羽毛


2024/2/21
★鳥にかかったルアーのはずし方

城ヶ島の赤羽根海岸にウミウの若鳥がおりています。
普段は下りないはずの砂浜にいたので注意すると、
左側足元に釣りのルアーがかかっていました。
このため、保護しようと思いました。

ルアーのかかったウミウ若鳥
ウミウ若鳥

ウミウは激しく噛みついてきましたが、
上下の嘴をつかんではいけません。
ウミウは雛の時期を除き、嘴にある鼻孔がふさがるため、
嘴をつかみ続けると窒息してしまいます。

このため持っていたリュックに
ウミウの頭と上半部を押し込めました。
するとおとなしくなったので、
状況をゆっくり観察できました。

ルアーには3か所に大きな三叉の針がついており、
それぞれ翼と脇,趾基部の肉球と跗蹠※、
水かきに刺さっていました。

ウミウの跗蹠(赤矢印)と肉球(青矢印)
跗蹠

たまたまその場に居合わせた釣りに詳しい方から、
釣り針が掛かった際の対処法を教わりました。

釣り針には、返しがあるためにそのままでは引き抜けず、
無理に引くとかえって傷を大きくするとのことでした。
その方は自動車からペンチを持ってきて下さり、
処置までして下さいました。

手際よく、ペンチで3か所の針を基部から切り離し、
次に鳥に掛かってたすべての針の基部を切断しました。
返しに逆らわずにそっと針を動かしながら、針を除去しました。

はずしたルアー_赤矢印に三叉の大きな針が付く
ルアー

自由になったウミウは、既に真っ暗になった砂浜を歩いて
その場を離れていきました。

私は、役に立ちませんでしたが、はずし方を学べました。
次に城ヶ島に来る時は、釣り針やテグスを
切断できる道具を携行しようと思います。

※跗蹠(ふしょ) 鳥のかかとと指の間の部分。一本の癒合(ゆごう)した骨と腱がある。


2024/2/14
★ヤドリギと連雀(れんじゃく)

大学近くの大庭の風景です。
遠くのケヤキに大きな塊がありますが、これはヤドリギです。

大庭の崖線林にあるケヤキに着生するヤドリギ
ヤドリギ1

ヤドリギ
ヤドリギ2

博物館の収蔵庫でヤドリギを探すと
1960年代の標本が複数ありました。
これには実がついています。
標本から実の色は判りませんが、
私が逗子市で見たものは黄色の実をつけていました。

博物館のヤドリギ標本
博物館のヤドリギ

ヤドリギの実(2005年1月25日逗子市)
ヤドリギの実

ヤドリギの実で有名なのは、
この実を食べるレンジャク(鳥)の仲間です。

ヒレンジャク(2003年3月23日横須賀市内)
ヒレンジャク1

ヒレンジャク2
レンジャクの仲間はヤドリギの実が好物で、
食べた後に排泄される種子入りの糞が、
とても粘ることが知られています。

その糞は、糸を引く納豆の様にゆっくりと落ちますが、
宿主のケヤキの枝に落ちるとその場にくっつきます。
条件がよければ、そこでケヤキに寄生します。

レンジャク以外にもツグミやヒヨドリが
実を食べると言われています。
私はまだ見たことがありませんが、
粘っている糞をしている小鳥をいつか見てみたいです。

ヤドリギの別名をホヤと呼び、
レンジャクをホヤドリと呼ぶ地域があるそうです。
レンジャクの仲間は神奈川県では比較的稀な種ですが、
見られる可能性はあります。

尾羽の先端の黄色いキレンジャクと
赤いヒレンジャクの2種が冬から春に日本で見られます。
博物館にレンジャク類の標本はありません。

参考文献
「カラー写真による日本産鳥類図鑑」(高野ら,1981)東海大学出版会
「山渓ハンディ図鑑3 樹に咲く花 離弁花①」(茂木ら,2000)山と渓谷社
神奈川県植物誌2018電子版(神奈川県植物誌調査会根2018)神奈川県植物誌調査会
https://flora-kanagawa2.sakura.ne.jp/efloraofkanagawa.html


2024/2/7
★ウミアイサの盗賊行為

他の個体が捕まえた獲物等を
横取りすることを盗賊行為と呼びます。

トウゾクカモメというグループが
飛んでいるカモメ類などを襲い、
獲物を吐き出させて奪う行為が
知られていますが、ウミウでは
飲み込む前のくわえている魚を
他個体が奪うことがあります。

また、トビやアオサギがしばしばウミウの
吐き戻しを採食していることがあります。

冬期間に岸に近い海上でみられる
ウミアイサというカモの一種が、
大きめの魚を持った個体を追いかけ、
奪いとる様子を撮影しました。





小魚であれば、水中から顔をあげた瞬間に
飲み込むため、通常奪い合いになりませんが、
すぐに飲みこめない大きさや鰭にとげのある
魚種などでは、奪い合いが起きる可能性が
あるかも知れません。

食べられた魚種がササノハベラの仲間の様に
思いましたが、いかがでしょうか。

砂地が所々にある浅い岩礁での観察例です。
お魚に詳しい方、教えて下さい。

魚1

魚2

魚3

博物館のウミアイサは、全身骨格標本です。
ウミアイサ骨


2024/1/31
★カワウの雛

カワウのコロニーで雛が産まれました。
横須賀市長井にある轡堰(くつわぜき)にある
カワウのコロニーで、1月27日に今年初めて
雛の姿を確認しました。以下観察記録です。
昨年11月26日には、巣づくりはされていませんでした。
12月30日に101巣、1月5日に131巣を確認しました
(未完成の巣を含む)。

11月26日

12月5日

1月5日

1月21日にかすかに雛の声がしましたが、
この時、姿を確認できませんでした。
抱卵日数は約27~31日かかるため、
12月24日前後に卵を産み始めたものと思われます。

1月14日

1月21日

1月27日に5つの巣で雛の姿を確認しました。
雛は親鳥の口の中頭を入れて中にある魚をもらいます。

1月27日





今年も長い長い育雛がはじまりました。
ここでは、9月頃まで途切れることなく抱卵・育雛が続きます。
一般に雛は30~45日で巣立ちます。

抱卵と合わせると57~76日、さらに営巣等を含めると、
1回の繁殖に3ヶ月くらいかかるものと思われます。

昨年の観察をさかのぼると7月までは多数、
8月に少数の雛が見られました。
最後の雛がみられたのは、9月3日でした。
このためここでは2回または3回の繁殖が
行われているものと予想しています。

2023年7月19日

2023年8月12日

最後の雛

参考文献:原色日本野鳥生態図鑑〈水鳥編〉(中村・中村,1995)保育社


2024/1/24
★落葉した樹上の古巣

冬に落葉樹が葉を落とすと、樹上にあった
野鳥の古巣を容易に見つけることができます。

鳥の繁殖時期は、多くの種では樹木の葉の茂る
春から初夏ですが、その時期以外は巣を使用しません。

身近な場所にも関わらず、私たちにはなかなか
見つけることができません。上手に作りますね。

メジロなどの小鳥は古巣を利用しませんが、
カラス類は前年の巣に手を加えながら使い続けます。

公園の背の低いトウカエデ(植栽)上のメジロの巣
(引地川親水公園)

トウカエデ

メジロの巣

博物館のメジロと巣の標本
メジロ標本

メジロの巣2

水際にあるヤマグワ低木上のキジバトと思われる巣
(三浦市小網代)
キジバトの巣

博物館のキジバト標本
キジバト標本

エノキ高木上のカラス類の巣(三浦市小網代)
エノキ

カラス類の巣

コナラ高木上のカラス類の巣(横須賀市芦名)
コナラ

カラス類の巣2

4号館北側ケヤキ(植栽)と
ハシボソガラスのものと思われる巣(藤沢市亀井野)
ケヤキ

ハシボソガラスの巣

博物館のハシボソガラス標本
ハシボソガラス標本


2024/1/17
★江の島のイソヒヨドリ

江の島のテトラボッドに面した堤防で、袋菓子を広げたら、
イソヒヨドリが近くのテトラポッドにとまりました。

じっと私の行動を観察しています。
そして軽やかにホッピング※しながら足元にまで来ました。
私の食べこぼしがないか、注視している様に思います。

イソヒヨドリは名のとおり磯、特に江の島の様な
崖のある海岸に好んで生息しますが、
ヒヨドリではなくヒタキの仲間です。

海外ではユーラシアから南アジア,アフリカ北部などにも
亜種が生息しますが、こちらは岩の多い地域や亜高山,高山に
生息します。でも日本のイソヒヨドリは、高山にいません。

江の島のイソヒヨドリ1
江の島のイソヒヨドリ

江の島のイソヒヨドリ2
至近距離でカメラを向けても逃げない

イソヒヨドリは元々海岸を中心に生息していましたが、
1980年代頃から海岸から離れた場所での繁殖が
報告されるようになりました。

以前江の島の同所では、人の足元まで寄ってきて
餌を欲しそうにしているスズメがいましたが、
最近イソヒヨドリでの同様の行動が目立ちます。
今、イソヒヨドリの生態に大きな変化が
起きているのでしょうか。

イソヒヨドリは大学構内にもいて、春先に
ガレリアのガラス屋根の内側でよい声を響かせています。

博物館のイソヒヨドリ標本は雌で、
灰褐色の地味な色合いをしています。

博物館のイソヒヨドリ

※両足を揃えて跳びながら移動すること

参考文献
「原色日本野鳥生態図鑑〈陸鳥編〉」(中村・中村,1995)保育社
「フィールド図鑑日本の野鳥第2版」(水谷・叶内,2020)文一総合出版


2024/1/10
★竜の髭(りゅうのひげ)

「りゅうのひげ」はジャノヒゲの別名です。
収蔵庫で、今年の干支にちなむものを探していたら、
古いジャノヒゲ標本に出会いました。

なんと昭和17年の六会(本学部がある)標本と
昭和16年の神武寺(逗子市)標本です。
どちらも80年以上前のものですが、
状態よく、美しい標本です。

六会標本
六会

神武寺標本
神武寺

昭和16年の方の採集者名は、日大園藝薬草科とあります。
昭和16年は、戦時下です。また本学部の前身である
農獣医学部(昭和27年~)以前のものでもあります。

ジャノヒゲ自体珍しい植物でありませんが、
当時の方が何らかの残す意義を感じ、
作製されたものでしょう。

戦争の最中に標本を作製した方や
残された方々のことを思うと、
標本を管理する責任の重大さを実感致します。

ジャノヒゲは元来ユリ科に分類されていましたが、
近年の植物分類の見直しにより、
クサスギカズラ科(ASPARAGACEAE)に
分類し直されました。

冬に林の中を歩くと、つやのある紺色で
小さな丸い実が地面に落ちていることがあります。
それはきっとジャノヒゲの実です。

参考文献
改定新版「日本の野生植物」(大橋ら,2015)平凡社
神奈川県植物誌2018電子版(神奈川県植物誌調査会,2018)




2023年12月 博物館便り

2023年11月 博物館便り

2023年10月 博物館便り

2023年9月 博物館便り

2023年8月 博物館便り

2023年7月 博物館便り

2023年6月 博物館便り

2023年5月 博物館便り

2023年4月 博物館便り

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